●属性3: 足掛かりをつくる

 私たちは新型コロナウイルス感染症によって、ヘルスケア、子どもの教育、仕事、食料品の購入など、あらゆることを再考する必要に迫られた。

 そこで登場したのが、遠隔医療、バーチャル教育、ズーム、食料品デリバリーサービスといったテクノロジープラットフォームだ(成功の度合いは異なる)。つまり、テクノロジーは病院から教室、職場に至るまで、「ノーマル」な日常生活を再構築する力を支える足掛かりとなっている。

 こうした足掛かりは、私たちの社会で何が機能していないかを露呈させると同時に、日々のタスクを達成するための新たな、時により優れた方法を生み出す大きな力を持つ。新型コロナウイルス感染症は、私たちを不確実性と曖昧さに満ちた世界に突き落としたが、結果として、それがなければ実現にあと100年かかったかもしれない文化的・社会的な変革をもたらした。

 あなたも、次のように自問してほしい。このモデルが再構築される中で、テクノロジーは従業員、クライアント、顧客のどの部分に足掛かりを構築できるだろうか。

 とはいえ、足掛かりを築くのは、テクノロジーだけではない。「オレンジ色のカエル」のようにシンプルなものでもよいのだ。これは、多くのネガティブなカエルの中に、ポジティブさを持つオレンジ色のカエルが一匹存在するという、例え話に基づいている。

 たとえば、アイオワ州とイリノイ州に拠点を置くあるヘルスケアシステムは、コストの増加と収入の減少に伴う大規模な組織改革を実行していた(情報開示:筆者はこのヘルスケアシステムにコンサルティングを行っているが、ここで例示するプロジェクトには関与していない)。

 その際、基盤となっていたのは「暗い日々でも、少なくとも1つは注視すべき明るい材料があるはずだ」という考えだった。そうした明るい材料は、困難な状況の中で、あなたと従業員を日々前進させる移行対象となる。

 あなたは今日、どのオレンジ色のカエルに気づいただろうか。

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 上記の3つの方法を通じて、移行対象はあらゆる形態の変化や不確実性の時期に支えとなる。物理的なオフィス空間に戻り、旅行を再開し、パンデミック後の新しい「ノーマル」を確立するうえで、次の3つの問いを自分に投げかけてほしい。

「どのような点について、従業員に選択肢を与えることができるか」「どのようにして、日々の活動にパーパスを植え付けることができるか」「新たな対象、イノベーション、テクノロジーのうち、どれが次へと向かう足掛かりとなるか」

 すべての移行対象が、容易に特定できるわけではない。だが、それらは現在のパンデミックとその後を通じて、組織のレジリエンス(再起力)を高め、最適化し、そして維持するための基盤となる。


HBR.org原文:3 Tools to Help Leaders Steady Their Teams During a Transition, March 30, 2021.