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働く父親として、仕事も家庭も大事にしたい。にもかかわらず、仕事に忙殺されて家族と過ごす時間がなかったり、両立しようとしてどちらも中途半端に感じてしまったりする。理想の父親像から離れていく一方だが、どうしていいかわからない。こうした「働く父親のキャリアの罠」から抜け出すには、自分の優先順位を認識し、それに応じてキャリア自体を見直す必要がある。キャリアの中盤でダウンシフトすることに抵抗があっても、経済的なトレードオフが生じても、働く父親として最善の選択をするために必要な助言を紹介する。


 現代の働く父親は、仕事でも家庭でも成功することを大切に考えている。家族をきちんと養うと同時に、愛情あふれる父親、パートナー、配偶者であるために十分な時間と努力を注ぐことに誇りを持っているのだ。

 しかし、仕事での成功は諸刃の剣であることに、多くの男性が気づきつつある。多くのメリットがあるものの、もはや自分の人生の優先事項、特に父親業には完全に一致しなくなった仕事に忙殺され、職場でも家庭でも自分が十分にできていないと感じてしまう人もいる。ある父親は次のように語った

「ずっと前から、息子が小学校に上がってバスケットボールの遠征チームに入ったら、仕事をセーブしようと心に決めていた。しかし、家族が経済的に私を頼りにしている中では、仕事を断るのは難しい。それに仕事自体は大好きだ。でも、大事な機会を逃している気がしてならない。昔からバスケットボールのコーチをしたいと思っていたが、試合に行けるのは、せいぜい3回に1回程度だ。
 妻が、最初に2人で話し合って決めた以上にキャリアを犠牲にしているのもわかっているし、そのせいで私たちの関係は緊張している。息子の前では愛情あふれる父親だが、息子は私の不在を感じていると思う。これではまずいとわかっているが、どこをどう変えればいいかわからない」

 こうした感情は、第一子が生まれたり、誕生日のような節目が来たり、あるいは最初にキャリアの選択をして以降、自分の人生がいかに変わったかを実感したりした時に湧き上がってくる。筆者はこれを「働く父親のキャリアの罠」と呼んでいる。

 かつては「要求レベルの高い仕事で、自分は成功する」と決めて全力投球してきたのだから、それを縮小することになった時には、これまで何のために努力し、多くの犠牲を払ってきたのかと思わずにいられないだろう。

 これまでのやり方を見直す場合、パートナーのキャリアや会社での昇進がどうなるかわからない。現在の稼ぎや医療保険、退職金積立制度は、どれも捨てがたい黄金の足枷になる。報酬がトップレベルでも、私立学校の学費や住宅ローンなど、大きな支出に当てる予定になっていることも多い。

 このジレンマが特にやっかいなのは、働く父親はキャリアパスの「収穫段階」に入ったばかりであることが多いからだ。

 収穫段階とは、幹部人材の紹介会社スペンサースチュアートで北米部門のCEOを務めるジェームズ・シリトンが使った表現で、キャリア初期のがむしゃらな働きが、大きな報酬や名声、影響力、市場性のある地位に変わり始める時期を指す。それまでのハードワークが報われる時期であり、現在のキャリアに留まるインセンティブになる。