●自分のエゴを乗り越える
ホリスティック医学の専門家であるエイミー・サルツマンは、キャリアのダウンサイジングに関する著書で、最大の障害は本人のエゴであることが多いとしている。
「負け組だと見なされるという考えを克服することが、キャリアをダウンシフトする人たちが直面する最大の課題である。(中略)第一線から離れることは、個人的なニーズとキャリアの期待の狭間で苦悩した結果であることがほとんどだ」と、サルツマンは書いている。次に紹介する父親が経験したジレンマは、その指摘を例証している。
「私は、馬車馬のように働くと言われていた。仕事が片付くまで働き続けるタイプの人間だったのだ。
息子が生まれてからは、自宅で過ごす時間をもっと増やして、家庭生活の積極的な担い手になりたかった。だから、週に2日は3時半には会社を出て、息子に夕食を食べさせ、風呂に入れ、寝る前の読み聞かせをして、それから午後8時には会社に戻って仕事を終わらせていた。
(中略)だが、周囲はどう思っているだろう。『馬車馬』という評判は傷ついてしまうのか。私は自分を正当化し、自分の行動を説明したい気持ちに駆られた。実際には、周囲の誰も、私の新しいスケジュールについて尋ねることはなかったにもかかわらず、だ」
自分の優先順位に沿った変更についてきちんと検討し、成功しているキャリアを見直すには、自意識がしっかりしている必要がある。
●柔軟なリモートワークの可能性を探る
新型コロナウイルス感染症は、職場を一変させた。かつてはリモートワークの導入に抵抗感を持っていた多くの企業が、いまやリモートワークを許可するだけでなく、むしろ奨励しているのだ。これにより、現在のポジションを維持しつつ、より柔軟な働き方を交渉する大きな可能性が開かれた。
あなたは会社に対して、正式なフレックスタイム制度の導入を求める、あるいは単にいつどこで働くかについてさらなる裁量を求めるかもしれない。コロナ禍の在宅勤務で優れた実績を上げていれば、交渉では一段と有利な立場に立てるだろう。
週に数日、通勤が不要になるだけで、時間的にも金銭的にも大きな節約になる。さらに在宅勤務であれば、家族のイベントを中心に柔軟な働き方ができる(それに夕食はいつも家族と一緒だ)。
いまでは多くの企業が、オフィスのある地域以外からも採用を増やしているため、転職先を探す場合でも、現在のポジションで生活費の安い地域に引っ越す場合でも、より大きな可能性が生まれている。
●働く父親に優しい会社を選ぶ
現在のポジションで可能な選択肢では、自分が求めている柔軟性が得られない場合、従業員の家庭生活をサポートすることで評判の高い転職先を探す。
フォーチュン100企業、求人サイトのグラスドア、父親向け情報サイト「ファザリー」が選ぶ「ベストプレイス・トゥ・ワーク・フォー・ダッド50」、そして『ワーキングマザー』誌の「ベストカンパニー」リストは、どれも貴重な情報源になる。知り合いの情報も、カルチャーフィットを知る貴重な知見を与えてくれる。
最後に、どの会社に応募するにしても、どの採用面接を受けるにしても、組織として働く親をどうサポートしているか、そして全人間的な職場の価値観を持っているどうか、確認するのを忘れてはいけない。