そこで筆者は、現在のキャリアパスと理想とする家庭生活の間で悩んでいる働く父親を対象にエクササイズを実施し、以下の3つのカテゴリーの優先順位をつけてもらった。

・雇用の安定、所得、昇進
・興味のある仕事、達成、他者に対するサポート
・独立性があり、家庭生活の時間も確保できる柔軟な仕事

 筆者はさらにエクササイズを続け、最初にキャリアの決断を下した当時(ほとんどの場合、20代前半)を思い出して、その時だったら10~20年後の優先順位をどのようにつけたかを尋ねた。

 このエクササイズを行うと、自分が選択したキャリアパスは、以前はしっくりきていたが、いまでは新しい現実に適応できていないことに気づかされる。

 この気づきは、トレードオフを考慮に入れつつ、どのようにキャリアを適応させるかを考え始めることにもつながる。自分の優先順位に基づき、キャリアチェンジをしたある父親は、次のように語っていた。

「40歳になった時、自分の人生を見つめ直し、どうすれば自分がなりたかった父親になることと両立できるか考えた。たくさん悩み、妻とも話し合った結果、最高経営幹部につながるキャリアパスから外れて、よりライフスタイルに優しいキャリアパスを見つけた。
 私は昔から、多くの父親ができないような形で子どもに寄り添える父親になりたいと思っていた。いまは、2人の娘の父親としてそれができている。学校に迎えに行き、テニスのレッスンに送り届け、夕食の準備をして、読み聞かせをする。私の経験は、どれだけ怖く、困難で、リスクと運が必要だったとしても、人生の中盤におけるキャリアチェンジが可能であることを示している」

 優先順位について考え抜いた結果、ミスマッチが見つかったら、自分のキャリアをシフトさせて、人生と父親業にもっと時間を費やしたいと思うかもしれない。

 キャリアパスの収穫段階にいることの利点は、自分のキャリアの主導権をみずから握れることだ。おそらく幅広いネットワークと優れた評判を築いているため、異なる企業や役割に移る可能性を探ることができる。同じように重要だと考えられるのは、現在のポジションのままで条件を交渉できる立場にいることだ。

 もしあなたが、父親としての時間を増やすためにキャリアを再考することに前向きなら、その方法はたくさんある。仕事と生活に大きな影響が生じると考えてしまうかもしれないが、それほど大きな変更は必要ないかもしれない。マインドセットを変えるだけで十分な場合もある。

 まずは、現在のポジションで変更できる部分を探す。その変更では不十分なら、そこから範囲を広げていくとよい。