予定外の離職

 求職活動におけるもう一つの潜在的な地雷は、予定外の、もしくは自発的ではない離職だ。ほとんどの採用チームは、基本的に在職中の候補者を好む。優秀な人物なら、次の仕事が決まる前に辞めることはないと考えるからだ。

 したがって、履歴書を見て最近、退職したことがわかると、その経緯について質問する可能性が高い。自分から辞めたにせよ、レイオフや解雇されたにせよ、状況を説明する際には、いくつかの重要な注意点がある。

・まだ苦々しい思いがくすぶっているとしても、次の会社の面接に臨む時は、誰かを責める気持ちはドアの外に置いてノックする。前職の問題点に意識を向けるのではなく、難しいことではあるが、前職での経験についてポジティブな側面を見つける。あなたはそこで何を学んだか。どのような人間関係を築いたか。どのような目標を達成したか。

・自分が活躍できる環境について、あらためて考える。たとえば、成長性が高い、イノベーションを重視する、スピード感があるなど、そうした要件を将来の雇用主に明確に伝えると、以前の組織ではそうしたサポートを得られなかったのだと状況を察してもらえるだろう。

・解雇された場合には、その事実を受け止める。会社や環境、役割が自分に合わなかった、リーダーシップや方向性が変化して求められる期待や力学が変わったなど、退職理由を簡潔に説明できるように準備する。

・その職務を通じて学んだことや、それが自分の仕事上のプロフェッショナルとしての成長にどのように役立ったかを強調する。

 筆者の元クライアントのハンナ(仮名)は、CEOとの意見の相違から、あるテクノロジー企業のCHRO(最高人事責任者)を辞した。CEOと激しい議論をした直後に辞表を提出するという、性急な展開だった。

 私たちはコーチングの中で、彼女の苦々しい感情と落胆を和らげるためのセッションを行ってから、退職した理由を正直かつ簡潔に説明するために入念に準備をした。彼女は将来の雇用主に、自分の状況を次のように説明した。

「前の会社には、もっと長く、何年も勤めるつもりでした。私はいくつかの重要なピープルイニシアティブを主導するために採用され、在職中に大きく前進させました。ですが、CEOがアプローチを変更しようと決めて、途中で予算が減ることになり、それでも当初の目標を達成するよう求められました。これは根底から覆される変更でした。私は同意できず、何度もCEOに懸念を伝えました。
 ここで強調しておきたいのは、私は必要に応じて戦略を変更することに前向きだということです。柔軟性は自分の強みの一つだと考えています。しかし、この時の変更は、私のチームが行ったリサーチやデータの裏付けもなく、新しいアプローチは成功しないだろうと考えました。
 私はいまもチームの成功を願っていますが、最終的に成果を上げることはできないと自分が確信している方向に進むことはできませんでした。そして、CEOはそのような視点を考慮に入れるつもりがなかったので、違う道を行くことで合意したのです」

 このアプローチは相手の共感を呼び、数回の面接を経てハンナは採用された。彼女を面接したエグゼクティブチームは、前職に関する彼女の透明性を高く評価した。さらに、コラボレーションやデータに基づく意思決定の重要性について率直に議論したことによって、彼女の重要な強みが浮き彫りになった。そして、オープンで協力的な環境を提供してくれる組織を彼女自身が見極めることができた。

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 この1年は先行きが不透明で、離職が(計画的なものも、そうではないものも含めて)大きく増えたため、就職活動をするにあたっては、自分を最大限にアピールすることがこれまで以上に重要になっている。

 完璧な履歴書などというものは存在しないが、職歴に長期間の空白、短いサイクルでの転職、予定外の離職などがある場合、これらのレッドフラッグに対する面接官の思い込みを克服するために、積極的に行動しなければならない。本稿で紹介した戦略をもとに、自分で組み立てたストーリーを語り、ポジティブかつ誠実に自分をアピールすれば、新しい仕事でもその次の仕事でも成功する足がかりをつくることができる。


HBR原文:How to Overcome Red Flags on Your Resume, March 31, 2021.