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企業業績を損益計算書だけで判断することが難しくなっている。GAAP(一般に公正妥当と認められる企業会計の基準)による報告だけでなく、非GAAP利益やプロフォーマ利益と呼ばれるように、自社独自の基準による利益を報告する企業が増えているからだ。GAAPが万能な基準とはいえないだ、自社の業績を少しでもよく見せするためにGAAPを用いないのであれば、それも問題である。本稿では、非GAAP利益やプロフォーマ利益の利点と弊害を明らかにする。


 ある会社が黒字か赤字か――この点は、経営者、投資家、銀行関係者、その会社の取締役にとって重大な関心事だ。投資家は黒字企業の株式を購入したいと考えるし、銀行もそのような会社に融資したいと考える。

 しかし、こう言うと驚くかもしれないが、ある会社が黒字か赤字かという問いに答えることは、次第に難しくなってきている。損益計算書に記される損益の金額は、さまざまな数字が差し引かれたり、調整されたりしたうえで算出される。そのため損益計算書の数字を見ても、その会社のコア収益性は明らかにならない。

 それに輪をかけて話をややこしくしているのは、いわゆる「GAAP」に基づく利益だけでなく、「非GAAP利益」や「プロフォーマ利益」と称される数字を開示する企業が増えていることだ。

 GAAPとは「一般に公正妥当と認められる企業会計の基準」の略称である。一方、非GAAP利益とはその名の通り、会計規則に従わずに計算された利益のことだ。GAAP利益と非GAAP利益の両方を報告している企業は、S&P500企業の95%以上に上る。GAAPに基づかない利益を報告するケースは、それほど増加しているのだ。本稿では、非GAAP利益を報告することの利点と弊害、そしてこのような手法が広がっている理由を見ていきたい。

 非GAAP利益は、それぞれの会社の事情に合わせて、キャッシュの支払いが必要とされない項目や、その会社の将来価値を予測するうえで重要でない項目を除外して計算する。まず、企業はGAAP利益を計算する。その後、GAAP利益からいくつかの項目を加除して、非GAAP利益を割り出す。

 非GAAP利益を基準に考えると、その会社の財務状況の見え方がまるで変わってくる。たとえば、ピンタレストは2019会計年度、GAAPに基づいて13.6億ドルの損失を計上した。しかし、同社はいくつかの費用を調整することにより、非GAAPで1700万ドルの黒字を報告した。