こうしたトレードオフがある中で、企業がソーシャルメディア上で苦情に対処する最善の方法はどのようなものか。

 筆者らが2014年と2015年にツイッターを開設していたS&P500企業(計375社)のトラフィックについて大規模分析を行ったところ、苦情の公表によるネガティブな効果が、顧客への配慮を示すポジティブな効果を一貫して上回っていた。

 1つ目の調査では、四半期ごとに企業のツイート件数、顧客からの苦情ツイート件数、企業の対応を測定し、それらを企業の市場価値と知覚品質(大規模調査のデータに基づく、ブランドに対する消費者意識の指標)の変化と比較した。

 こうして得られたデータをもとに、筆者らはソーシャルメディア戦略を2つのタイプに分類した。一つは、企業が苦情の75%以上に公に対応する「オープン戦略」、もう一つは企業が苦情の75%以上にまずメッセージを1件返し、その顧客を非公開のフォーラムに誘導する「クローズド戦略」だ。

 調査の結果から、企業が苦情に対応すればするほど、ブランドの価値と知覚品質が低下する傾向があることがわかった。さらに、企業がツイッター上で公に苦情に対応すると、その企業の他のツイートがかき消され、苦情とは無関係のツイートに対するエンゲージメント率の低下につながることも明らかになった。