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消費者が、ブランドに対するネガティブな体験をソーシャルメディアで公開することが増えている。企業側は、そうした不満や苦情に対して迅速かつ公に対応することが一般的だが、これには深刻な欠点がある。公に対応することで、企業が顧客を大切にしていることを示すことができる一方、そうした対応自体がネガティブな体験に耳目を集めることにつながるからだ。その結果、ブランド価値のみならず、会社の市場価値にも影響を及ぼしかねない。こうしたトレードオフの中で、企業がソーシャルメディア上の苦情に対処する最善の方法を探る。


 ここ数年、消費者がブランドにまつわるネガティブな体験をソーシャルメディアで共有することがますます広がっている。

 2020年の「全米顧客不満調査」(National Customer Rage Study)によると、電話や対面ではなく、デジタルプラットフォームで不満を伝えることを好む顧客は、過去3年間で3倍に増加した。また、米国の消費者の48%は、企業の製品やサービスに対する人々の体験を評価するために、ソーシャルメディアを利用している。

 これらの結果は、従来の非公開な苦情処理の方法が大きく変化していることを示しており、顧客とのエンゲージメントを図っているブランドにとって、課題とチャンスの両方をもたらしている。

 具体的には、多くの企業は苦情に対して、迅速かつ公に対応することが一般的だが、このアプローチには深刻な潜在的欠点がいくつかある。公に対応すれば、企業が顧客を大切にし、顧客ニーズに積極的に取り組んでいることを示すことができる一方、そうした対応自体がネガティブな体験に耳目を集めることにもなる。

 特にツイッター上では、苦情に対応することで元の投稿がブランドのフォロワー全体に公開される。これに対して、ブランドが対応しなければ、投稿はその顧客のフォロワーにしか公開されない。

 顧客からの苦情が多いと、ツイッターが苦情の集まる場となり、ブランドに対する消費者と投資家のセンチメントに影響を与える可能性がある。この現象を、筆者らは「苦情の公表」(complaint publicization)と呼んでいる。