当然ながら、マーケターにとって苦情の対応戦略は、不満を持つ顧客への配慮と悪影響を及ぼす苦情の公表とのバランスを取る手段の一つにすぎない。
たとえば、多くのソーシャルメディアプラットフォームでは、ブランドがその場で苦情に対応しているかどうかにかかわらず、苦情の可視性を低下させる機能を提供している。フェイスブックとツイッターにおいては、企業が投稿をトップの位置に「ピン留め」することで、苦情とその対応のやり取りではなく、自社コンテンツを常に最も目立つ位置に表示することができる。
さらに、それぞれのソーシャルメディアプラットフォームに特有の文脈やブランド独自の事業背景に、最も適した顧客エンゲージメント戦略を考慮することが重要だ。
だが概して、即時に詳細かつ公に対応するベストプラクティスは、広く受け入れられていても、深刻でネガティブな影響をもたらすおそれがあることを、筆者らの研究は示唆している。特にコンテンツを選別するアルゴリズムが搭載されているソーシャルメディアプラットフォームでは、ブランドが苦情に対応すると、苦情をより激しく促す可能性がある。
顧客は、ソーシャルメディア上で苦情を訴えることを好む。しかし、そうした公共性の高いプラットフォームにおけるエンゲージメントは、苦情を過度に増幅させ、不満を持つ他の顧客の同意を促し、最終的には顧客と投資家の双方から見たブランド価値を低下させるおそれがあるのだ。
"Why You Shouldn't Engage with Customer Complaints on Twitter," HBR.org, April 29, 2021.