思いやりがもたらす恩恵
思いやりのある行動をすると心に決めると、多くの重要な恩恵がもたらされる。第1に、これは最も明白なことかもしれないが、思いやりのある行動を実践すると同僚を大いに助けることになる。
ギャラップが米国の労働者を対象に毎年実施している調査によると、職場で評価された従業員は、バーンアウト(燃え尽き症候群)やアブセンティーイズム(常習的欠勤)が減り、ウェルビーイングが高まる。賛辞や評価や称賛の言葉を受け取ると、個人の充実感、自己肯定感や自己評価が高まり、ポジティブ感情の引き金になることが、何十年にもわたる研究で明らかになっている。
賛辞がもたらすポジティブな下流効果は、誰もが直感的に理解できるだろう。他者からの称賛は、私たちに生来備わっているポジティブな自己像と一致し、自己評価の正しさを確認させてくれる。
第2に、思いやりのある行動を実践すると、自分が有意義な人生を送っているように感じることができる。たとえば、自分以外の誰かのためにお金を使ったり、自分の時間をボランティア活動に当てたりすることで、私たちのウェルビーイングは高まり、幸せで有意義な人生だと感じられるようになることが、研究結果から明らかになっている。
これは、誰かに対して思いやりのある行動をするということは、自分自身よりも重要な大義のために尽くしていることを意味するからだ。それは、他者が自分をどう見るかという客観的認識(すなわち、自分の評判を高める)と主観的認識を形成する。
人間は、自分自身の行動を観察することによって、自分がどのような人間かを推察する。思いやりのある振る舞いは、自分は「善い人間」に必要な資質を持っているという確信を与えてくれる。リモートワークプレイスでは、喜びの瞬間を醸成することが難しいため、みずからの振る舞いから自己肯定感を得ることは、長期的な仕事満足度につながる重要な恩恵かもしれない。
第3に、筆者らの研究で明らかになったことだが、人間は誰かをほめると、自分がほめられるよりも大きな幸せを感じる。
筆者らが行った実験では、参加者を2人組にして、まず自分のことを紙に書き、次に互いに自分のことを話してもらった。そのうえで、2人組の一方に、相手の好ましい部分や尊敬する部分について、率直にほめてもらった。すると、ほめ言葉を口にすることは、相手からほめ言葉を言われるよりも幸福感を高めることが一貫して示された。
とはいえ驚くべきことに、思いやりのある行動がもたらす快楽的便益を、ほとんどの人々が認識していなかった。