●上限と下限を設定する

 目標設定という概念は、とりわけ新年の始まりに人気が出る。しかし、どのような手順でその目標を達成するかを書き出す人は、それほど多くない。さらに筆者の見る限り、目標ごとに日々取り組む上限と下限をわざわざ設定する人は、はるかに少ない。

 グレッグ・マキューンは著書Effortlessの中で、重要な優先事項に関して、その日に取り組む具体的な仕事量を、最低限の場合と最大限の場合の両方で設定することを推奨している。たとえば、営業目標の数字を達成するために、セールスコールは1日最低5本、最高で10本かけると決めることができるだろう。

 これと同じことを、自分が達成したいプロジェクトや目標について実行する。たとえば、本を出したいと思っている場合、1日最低30分は執筆するが、燃え尽きを防ぐために1日3時間を超えては執筆しないと決める。目標が運動の場合には、ワークアウトを行うのは週3回以上、5回以下と決めれば、十分な運動量が確保できるだけでなく、家族との時間や個人的なタスクといった他の優先事項にも、時間を費やすこともできる。

 このような限度であれば、ある程度融通が利き、物事を順調に進める助けになる。みずからの上限と下限を設定する際は、その領域で「自分が勢いを維持している」と感じられる最低限の仕事量について、熟考することが欠かせない。

 下限を設定する狙いは、自分が「止まった」と感じないようにすることだ。いったんそう感じると、慣性を打破して再開するために、よりいっそう努力しなければならない。上限を設定する時には、その領域に過度の時間を費やし、人生の他の領域が犠牲になることがないように、どこで線引きすべきかを考える。

 ●自分の傾向を理解する

 あなたは何かの目標に取り組む時、ギアを上げた状態を24時間365日維持しようとする傾向はないだろうか。あるいはローギアのまま仕事を続けて、最後の最後に慌ててフィニッシュラインに駆け込むタイプだろうか。ある日は取り憑かれたように明け方まで働き、次の日はダウンしてほとんど何もできないという両極を行ったり来たりしていないだろうか。

 自分の傾向に応じて、以下の対策を取るのがよい。

・1番目の「ハイギア型」は、人間として必要な休息を取り、自分が回復期間を取っても構わないのだと、みずからに許可を与えること必要だ。活動の上限を超えて燃え尽きに向かっていないか、常に注意する。

・2番目の「ローギア型」は、下限を常にクリアしているかを注意する。どれだけ誘惑に駆られても、ゆっくり休む前には、少なくとも最小限の量をこなしていることを確認する。

・3番目の「変速型」は、上限と下限の両方に注意を払う必要がある。上限を超えないようにすれば、翌日下限を下回ることはないはずだ。

 前出のマキューンが賢明にも著書に書いているように、「明日までに完全回復できる以上のことを、今日はしてはならない」のだ。