
企業はかつてないレベルでDEI、すなわちダイバーシティ、エクイティ、インクルージョンの推進に取り組んでいる。だが、その進捗を具体的な数値で表すのは難しい。特にインクルージョンについては定義すら曖昧で、改善に取り組むにも目標設定すらままならない。そこで筆者らは、世界中のDEI担当エグゼクティブや従業員を対象にした調査研究を行い、インクルージョンに関する自社の全体像を示す7つの要因を特定した。本稿では、調査研究の結果から開発された指数に基づいて、従業員センチメントを測定し、組織が迅速に行動するにはどうすればよいかを論じる。
2021年以降も企業がDEI、すなわちダイバーシティ(多様性)、エクイティ(公平性)、インクルージョン(包摂)の推進にリソースと注目の両面で投資を増やしていくことは間違いないだろう。ただ残念なことに、多くの組織がそうした戦略のインパクトを測定したり、そのインパクトを増え続けるステークホルダーに伝えたりすることに苦労している。
「ダイバーシティとインクルージョンのためのCEOアクション」[編注1]には、現在までに1600人以上のCEOが署名している。また、2020年第2四半期の業績に関する会見では、企業の40%がダイバーシティとインクルージョンに言及した。前年同期はわずか4%だった。
ガートナーの調査によれば、2020年にDEI推進を最優先課題としたHR担当リーダーは、2019年に比べて1.8倍に増えた。また、ガートナーの分析では、ダイバーシティ専門の採用担当者の求人は800%近く増加していることが明らかになっている。
最近のガートナーの調査によると、DEI担当リーダーは「目標を設定し、DEIの進捗を数値で追跡すること」を2021年の2大最優先課題の一つに挙げたが、実際に職場のリプレゼンテーション[編注2]を測定することは容易ではない。
これは自己同一性を管理し、過小評価されている従業員グループを地域を超えて特定する必要がある多国籍企業にとっては、なおさら難しい。たとえば、デモグラフィック属性に関する情報が手元にあったとしても、どのような目標を設定すべきか判断することには困難が伴う。はたして、「よい」リプレゼンテーションとは、いったいどのようなものなのか。
しかし、インクルージョンと、すべての人々が尊重され、受け入れられ、サポートされ、大切にされていると感じ、全従業員が組織の意思決定プロセスや成長機会に完全に参加できる労働環境を測定するのは、さらに難しくなる。
ほとんどのリーダーは、多様な職場の可能性を解き放つのは、インクルージョンであることを理解している。しかし、ダイバーシティを測定し、追跡する方法を見出していても、インクルージョンについてそれができている組織は少ない。
このことは、DEI全体の進捗を経時的に追跡する、一貫性のある統一されたメトリックス(指標)の策定を妨げてきた。組織がインクルージョンを有効に追跡するには、インクルージョンの定義を慎重に行ったうえで、従業員のセンチメントを測定し、その結果に基づいて組織が迅速に行動できるようにする必要がある。
ガートナーの新たな研究は、このコンセプトに数値を当てはめる方法やリーダーによる有意義な行動、その過程で回避すべき落とし穴について概要を示している。