3. 企業文化と自社での仕事のやり方を理解させる
新入社員は、最初から職場の文化を知っておかなくてはならない。オフィス勤務の場合よりもじっくり時間をかけて、さまざまな場面で企業文化に沿った行動がどのようなもので、企業文化に沿わない行動がどのようなものかを説明すべきだ。新しい社員が仕事のやり方について質問できる場も設けよう。
●言外の前提知識を明確化する
多くの組織では、自然発生的なコミュニケーションを通じて、会社の歴史や規範が新しい社員に伝達されることを期待してきた。
これはバーチャル環境に限ったことではないが、動画やウェブサイト、文書などで自社の歴史を紹介するようにすれば、新入社員がそうした知識を身につけるペースを加速させられる。古株の社員たちとのやり取りを繰り返す形でその種の理解を深める場合より、所要時間がずっと短く済む。
最初は違和感があるかもしれないが、企業風土や、堅苦しさの度合い、ドレスコード、ビデオ会議でのエチケット、メッセージをやり取りする際の作法、業務の時間など、当たり前のように考えられている規範について明確なガイダンスを行うことが有益なのかもしれない。
新入社員がこの種のことで迷わないようにしよう。こうした点がはっきりしないと、物事が曖昧になり、ストレスが生まれる恐れがある。
●企業文化に関するパートナーを指名する
新入社員が企業文化について質問できる同僚を指名すれば、大きな恩恵が期待できる。そのパートナーが重要な話し合いの後で補足説明したり、企業文化に反する行動に関して警告を発したり、新しい社員の振る舞いが同僚たちにどのような印象を与えるかを教えたりすればよいだろう。
4. 期待される役割を明確にし、一人ひとりの仕事と会社全体のミッション、ビジョン、ゴールとの関わりを意識させる
最初の100日間やそれ以降に、どのようなことが達成できれば成功と言えるのかについて、新しい社員が明確に理解できるようにすべきだ。新しい社員は、自分の仕事が会社の成功とどのように結びついているかを、知っておくことが望ましい。
新しいメンバーを迎え入れた部署のマネジャーは、自社のリーダーが会社の方向性や目標について語ってきた内容の重要な点を新しい社員に伝えるべきだ。そうすることで、新入社員は自社のビジネスの全体像をよく理解したうえで、自分の仕事に取り組める。
その職場でどのような役割を果たす必要があり、どのような成果を期待されているのかをはっきりと示すことは、新しい社員が仕事の優先順位を判断し、早い段階で成功を収めるうえで不可欠だ。早期に成果を上げられれば、将来成功を収めるための強力な土台と弾みが生まれる。
長い目で見ると、ある人が職場で担う役割は次第に変化したり、状況への適応が必要になったり、複雑で曖昧になったりすることもあるが、最初の段階で役割を明確に理解しておけば、状況の変化に対応する足場を築くことができる。
オンボーディングは、社員の成功を後押しする重要な要素の一つだ。うまくスタートを切れば、その後のキャリアに弾みがつく。それに対し、滑り出しで失敗すると、その社員は自信を失い、会社側は採用が失敗だったのではないかと思い始める。
対面式にせよバーチャルにせよ、オンボーディングに成功する会社の特徴は、そのための活動に意識的に取り組んでいることだ。そして、そのような会社は、最初の1週間や1カ月、あるいは100日間だけで、そうした活動をおしまいにしない。
オンボーディングは、継続的な社員育成の出発点と考えるべきだ。オンボーディングがうまくいけば、その社員はその後も企業文化に沿った行動を取り、職場で幅広い人間関係を築き、みずからの役割で大きな成果を上げられるだろう。
"How to Set Up a Remote Employee for Success on Day One," HBR.org, May 10, 2021.