調査結果からリーダーが学べること

 今回の調査結果から、ビジネスリーダーが学ぶべき重要点は何だろうか。

(1)木を見て森を見る

 ビジネスリーダーは、ロケーションの制約をなくして、より幅広い視点で採用を検討するとともに、組織の創造性と生産性を高める従業員を引きつける魅力を高めなければならない。

 たとえば、「在宅人材」のような未活用の人材プールを掘り起こし、子どものケアのために自分のキャリアを棚上げしている親や、高齢の家族を世話するために離職した人を復帰させることができるだろう。また、退職したものの、週に数時間だけ働きたいベビーブーム世代を活用することもできる。

 パートタイムや独立請負業者、ギグワーカー(労働者に占める割合はかつてないほど拡大している)に、より長時間働いてもらうことも考えられる。これは当然のことながら、住んでいる場所にかかわらず、グローバルな人材を探すことを意味する。

(2)学習と人材開発を重視する

 コロナ禍と、顧客の嗜好やニーズの変化から生まれた新たなビジネスモデルは、企業と従業員が成長するための新たな役割と機会をもたらしている。スキルアップとリスキリング(再教育)は、それらを活用するうえで決定的に重要な要因となる。

 筆者らの調査では、以下が明らかになった。

・従業員の82%とHRディレクターの62%は、世界の雇用市場で競争優位を維持するには、少なくとも年1回、現在のスキルを磨くか、新たなスキルを習得する必要があると考えている。

・HRディレクターは、最高の人材を採用し、維持するうえで最も重要な要因は、組織がアジャイルな学習を可能にする最新のコラボレーション技術を持っていることだと考えている。従業員の88%も、新たな仕事を探す際に、この要素をチェックすると述べている。

 大切なのは繰り返すことだ。組織が、ビジネスを成長させるために必要な人材を引きつけ、維持するには、リスキリングやスキルアップに重点を置く必要がある。

 それを実行する組織は、既存の従業員のモチベーションを高めるだけでなく、最も優秀な採用候補者の注意を引き、コロナ禍が終息した時に以前と同じ場所から再スタートを切るのではなく、より強く、よりよい立場から未来に向かうことができる。

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 この1年で、従業員の仕事に対する考え方やアプローチは変化し、元に戻ることはないが、1つだけ変わらないことがある。自社の進歩に必要な人材を魅了し、維持したい企業は、未来の従業員が何を最重視するのかを理解しなければならないということだ。

 企業は、新しいフレキシブルワーク・モデルを受け入れ、独自のキャリアを設計できる従業員を育成する必要がある。その過程で、既存の従業員のモチベーションと熱意を高めるだけでなく、最も優秀な採用候補者の注目を浴びて、自社のビジネスを新たな高みに導くことができるだろう。


"What Your Future Employees Want Most," HBR.org, May 31, 2021.