職場で強固な人間関係を育む
大勢の労働者を伝統的なオフィスからリモートワークに移行させることの利点と弊害について判断を下すのは、まだ早い。この点に関して結論を導き出すためには、さらに多くの研究が必要だ。
リモートワークへの移行により、大きな恩恵に浴する従業員もいるだろう。前述の通り、リモートで働くことができれば、人生に意義をもたらせる人たちと過ごす時間が増えるからだ。しかし、リモートワークが生きがいに悪影響を及ぼす恐れがないわけではない。
さまざまな調査によれば、ミレニアル世代は孤独感を訴える人の割合が年長世代より大きい。たとえば、ユーガブの2019年の調査によると、ミレニアル世代の30%はしばしば、あるいは常に孤独を感じていると答えている。この割合は、X世代では20%、ベビーブーム世代では15%だった。
別の調査で、さらに若いZ世代も対象に調べたところ、この世代が最も孤独を感じている可能性があるとわかった。また、最近の調査によると、18~25歳の層は、コロナ禍の中でとりわけ孤独を感じているという。
理屈の上では、リモートワークを実践すれば、どこに住んでいても仕事ができ、通勤に時間を費やす必要がなく、概して働き方の柔軟性が高まるはずだ。その点で、非常に魅力的な働き方に思えるかもしれない。しかし、リモートワークへの移行に伴い、重要な人間関係から切り離されたように感じる可能性もある。特に若い世代では、この点が大きな問題になるかもしれない。
マネジャーは、リモートワークへの移行が人間関係とチームビルディング、そしてメンタリングに及ぼす長期的な影響を考えるべきだ。同僚や上司との結びつきを感じられない時、自分の仕事を有意義なものと感じることが難しい人も多いのかもしれない。
ハイブリッド型の働き方を選べるようにして、ある程度の柔軟性を提供すると同時に、対面式の仕事環境も確保してはどうだろう。従業員が強固な人間関係を確立・維持できるようにすれば、仕事で感じる生きがいと、仕事以外で感じる生きがいのバランスを取りやすくなるかもしれない。
リモートワークが当たり前になれば、マネジャーはこれまで以上に、職場における社交の機会を用意し、メンタリングを行うことに時間を費やす必要がある。
具体的には、時折、対面式の社交イベントを開催して、従業員が互いのことを深く知る機会をつくったり、ベテラン従業員と経験の浅い従業員をペアにしてメンタリングを促したり、マネジャーとチームのメンバーがオンライン上で業務について話し合う時間を設けたり、定期的にバーチャルなチームミーティングを開いたり、バーチャル・ワークスペースのソフトウェアを利用して、オフィスにおける社交体験のせめて一部でも再現するようにしたりすればよいだろう。
コロナ禍をきっかけに、多くの労働者が、自分の人生で最も重要なものは何か、そして生きがいをもたらす要素にもっと時間を割くためにはどうすればよいかを、深く考えるようになった。マネジャーは、従業員の実存的なニーズをよく理解し、その面で彼らを強力に支援するほど、従業員を会社につなぎとめ、従業員のやりがいを引き出すことができるだろう。
"You Can't Cure Your Employee's Existential Crisis. But You Can Help," HBR.org, June 07, 2021.