政治的相違の正しい対処法

 あなたが直感で導き出した解決策が、政治的議論を禁止することならば、次のように自問してほしい。「どうすれば従業員をサポートし、彼らが相違に対処し、互いを尊重し、相手の話に耳を傾け、そこから学ぶことを促すことができるだろうか」

 この問いかけは、定期的に繰り返す価値がある。なぜなら、イノベーション、安全性、モチベーション、アジリティ(敏捷性)、そしてパフォーマンスのすべてが、この答えに依存しているからだ。

 交流分析の用語では、このアプローチを「大人(A)から大人(A)への問いかけ」と呼び、そこでは人は問題と相違について注意深く、好奇心を持って考える。このようなアプローチを政治的対話の手法として組織に定着させることを望むリーダーは、次の4つの要素に注力しなくてはならない。

 ●他者の意見に対する共感と尊重を確立する

 組織の中で政治的共感を築きたいと考えるリーダーは、従業員が互いに理解し合い、境界線や相違について議論する方法を見出せる場を設ける必要がある。それぞれ相違はありながらも、互いに敬意を持って、目の前の仕事にあたる方法を身につけるのだ。

 自家製のケーキ(自家製でなくても構わない)を持参してその場でおしゃべりを促したり、ズーム会議のアジェンダに参加者が仕事以外でやりがいを感じていることや、誇りに思っていることを話す時間を数分間盛り込んだりしている上司もいる。

 こうした会話は些細なことに思えるかもしれないが、個人的な話やみずからの弱さを日々共有し、他者に対する習慣的なレッテル貼りや判断にとらわれなくなれば、政治的共感と尊重が高まる。

 ●上層部に異なる視点を取り入れる

 次のステップは、リーダーが積極的に、異なる視点をみずからに取り入れることだ。

 権力者に真実を話すことに関する筆者らの調査では、人は自分の意見を他者の意見よりも30%以上高く評価すること、リーダーは他者にとって何が重要かを実際は理解していないにもかかわらず、自分は理解していると信じる幻想を抱く傾向があることがわかっている。

 これは、組織やビジネススクール、社会でよく見られる「力強いリーダー」像と一致する。リーダーシップとは支配力、力強さ、そして唯一の真実やビジョンを持ち合わせていると考えるものだ。

 リーダーが異なる意見を受け入れるには、スキルと自己認識が必要になる。筆者らが協働したあるリーダーは、チームの中であえて反論する「悪魔の代弁者」の役割を設け、すべての会議で誰かが反対意見を述べることをタスクとしていた。

 また、ある組織ではリーダーが現場のスタッフよりもはるかに大きな力を持っていると見られていたが、筆者らは人事部門のディレクターから依頼を受けて、従業員が声を上げ、意見を聞いてもらえた経験に関する非公式なストーリーをまとめ、シニアエグゼクティブチームに共有した。