●ミスを潔く受け入れる

 誰もが常に完璧な表現力を持ち、洗練されていて、組織の方針に従わなければならないとしたら、政治的対話は生まれない。

 筆者らの調査では、人が沈黙する理由の上位2つは、ネガティブに受け取られることへの恐れと、相手を怒らせたり困惑させたりすることへの恐れだ。しかし、何かに熱心になるほど、表現が明確でなくなることはよくある。

 特にリーダーは、組織の他のメンバーのロールモデルとして、次のように自問すべきだ。従業員が発言したものの明確でなかったり、発言するスキルが不足していたりした場合、彼らはどのように受け止められるだろうか。その反応は、彼らが学習して再挑戦することにつながるか、それとも沈黙させるか。

 筆者らはマインドフルネスの手法をコーチングすることで、リーダーが自分の反応に対する意識を高め、より生産的な反応を選択できるように支援している。

 ●意義の唱え方を教える

 上手に意義を唱える力を身につけることは、政治的相違に対処する企業の能力にとって利益になるだけでなく、組織のイノベーション能力にも欠かせない。

 対立することに従業員が慣れるようにするには、リーダーは異議を唱えること、そして上手に異議を唱えることの手本を示さなければならない。筆者らが協働しているある企業では、リーダーは取締役会で存在する対立について従業員にオープンにし、意見の相違やそれを成功裏に解決することが、優れた業績を上げるために不可欠であることを説明している。

 上手に意義を唱えるには、意見の相違について当事者の一方または両方が「私は正しい」「あなたは間違っている」という戦いだと認識してしまうと、それが破壊的なものになることを組織は理解しなければならない。

 筆者らが協働しているある組織では、対立に関するエグセクティブ研修に調停というテーマを取り入れている。そこでは、特に自分のほうが高い役職にある場合、みずからの主張を押し通す前に、相手の主張を十分理解していると相手に感じてもらうことを重視している。

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 あなたに組織の政治的発言を禁止したいという衝動があるなら、組織が相違や課題に対応できないことを示している可能性がある。それは、アジャイルでイノベーティブな組織の能力にとって悪い兆候だ。

 特定の話題を禁止する前に、本稿で紹介した4つのうちの1つ、あるいはすべてにおいて、組織の欠陥を隠そうとしているわけではないことを確認してほしい。もしそうならば、禁止することは単なる応急処置にすぎず、その根底にあるものに目を向ける必要がある。


"Don't Ban "Politics" at Work," HBR.org, July 07, 2021.