●トップから始める

 チーム、部門、会社全体のいずれのレベルで、非同期型の働き方にシフトしようとしているにせよ、まずは組織のリーダーから始めなければならない。シニアリーダーシップは同意するだけでなく、それを実行し、模範となる必要がある。

 ツイッターのマイケル・モンターノは次のように話す。「(CEOの)ジャック(・ドーシー)は他の経営幹部と同様、世界中の顧客にサービスを提供するためには、分散した労働力を構築する必要があることを理解したうえで、このトレンドをどう受け入れるかについて非常に計画的に考えていたと思う。優秀な人材は、働き方にフレキシブルな選択肢があることを期待していることもわかっている。そこで私たちは、自分たちでそれを具現化し、実際に試してみることにした。それをリーダーシップチームで行い、現在はエンジニアリング部門の経営幹部とも実行している」

 反対にトップのサポートがなければ、こうした文化のシフトが妨げられる、あるいは完全に消滅してしまうこともある。

 マサチューセッツ工科大学スローンスクール・オブ・マネジメント特別教授のエリン・ケリーと、ミネソタ大学教授のフィリス・モーエンは共著Overloadの中で、あるIT企業の一部門における「STAR」(Support、Transform、Achieve、Resultの頭文字)と呼ばれるデュアルアジェンダの働き方の再設計に関する実験について記している。

 その実験は、「完全結果志向の職場環境」(ROWE)を開発したカルチャーRxのジョディ・トンプソン、カリ・レスラーとの協働によって行われた。

 STARは、組織と参加する従業員の双方に利益があるように設計されている。従業員は、仕事をする方法、場所、そして特に時間を自由に決めることができた。その結果、6カ月以内に、生産性にまったくネガティブな影響を及ぼすことなく、バーンアウトの減少、職務満足度の向上、エンゲージメントと定着率の向上などの大幅な改善が見られた。

 しかし、そのIT企業はのちに買収され、「古い体質」と見られる新たな経営陣によって、9時~5時のオフィス勤務という厳格な方針が再び課せられ、最終的にSTARの取り組みは中止された。

 ●成果を重視する

 明確な目標と成果を定義することで、非同期で働く従業員は、いつ、どこで、どのように仕事をするかではなく、望ましい結果に集中することができる。

 ノースウェスタン大学ケロッグスクール・オブ・マネジメントの臨床助教授でリーダーシップ論を担当するエレン・ターフェは、ブランドおよび製品の研究開発を行う専門会社(現ラヴェル)のプレジデントを務めていた際、カルチャーRxのサポートを得て、自社のROWEへの移行に取り組んだ。

 ターフェは次のように話す。「『やるべき仕事はこれだ』から『私たちが求める成果はこれだ』へのシフトだった。成果に基づくように変わったことで、より有効な方法で業務を遂行できるようになった。多くの企業では仕事をこなすのに精いっぱいで、自分たちが必要としている成果や、顧客がそれをどのように利用するのかを明確にしていない場合がある。私たちは非常に集中することができた」

 同様に、成果にフォーカスすることで、従業員はより効率的になり、連携し、エンパワーされる。ツイッターのマイケル・モンターノは、次のように語る。

「非同期型の文化を機能させるうえで最も重要なことの一つは、社内でパーパスや目標をどう明確化し、いかに浸透させるかだ。それによって中央集権的なリーダーシップに依存するのではなく、分散したチームが互いに調整し、何が重要かを理解して、それを実現し、会議ですべてを得ようとするのではなく、創造性を発揮することに集中することができる」