●明確な合意を形成し、互いに説明責任を負う

 新たな働き方について議論する際、チームメンバーはどのようにして1日を理想的に組み立て、なおかつやるべきことを遂行するかを考えることができる。

 これは人によって異なるだろう。さまざまなワークストリームの依存関係とステークホルダーのニーズを特定し、それらをどう満たすのかを考えなければならない。

 多様なテクノロジーをどう使い、それらをいつ遮断するか、許容できる応答時間、緊急の問題をどう処理するかなど、いくつかの要素について明確な合意を形成することだ。

「応答時間で、互いのコミットメントを判断しない」など、新たな在り方についても取り決めをする。ケリーはこう話す。

「緊密に協働する相手で、毎日午後4~5時はミーティングをしないことに同意した同僚がいた。彼女は必ず私に答えをくれたが、それは午後4~5時になった。実際、4~5時までに必要なほど緊急性の高いものはほとんどなかった。私は必要に応じて彼女に連絡を取ることはできたが、彼女はそれ以外の時間は仕事に集中し、没頭していた」

 同様に、こうした合意事項について従業員に説明責任を持たせることも重要だ。そのためには、トンプソンとレスラーが「スラッジ」と呼ぶものを指摘する必要がある。

 スラッジとは、新しい文化への移行を妨げるような軽率な発言や質問すべてを指す。たとえば、「ああ、今日は銀行員の時間に働いているね」「午後3時にどこにいたのですか。連絡を取ろうとしたのですが」などだ。

 こうしたコメントに対しては「何か必要なことはありますか」とシンプルに答えることを、トンプソンとレスラーは勧めている。そうすることで、すぐに会話の焦点が達成すべきタスクや目標に移る。それらがどこで、いつ、どのようにして達成されるかではない。

 ケリーとモーエンが協働したIT企業では、従業員がロールプレイによってスラッジの対処法を練習した。

 ●実験を行い、評価して、調整する

 非同期型の働き方への移行は「一度で終わる」ものではなく、成功させるために時間をかけて調整や微調整を行う反復的なプロセスだ。

 こうした移行に不安を感じるのは当然だが、実験的に始めることで強く抵抗する人々を納得させることができ、個人的にも仕事上でもポジティブな成果が得られれば、彼らを推進者に変えることができる。

 小さなことから始め、新しい行動を試し、何が効果的で何が効果的でないか、またどのように感じるかを確認しよう。

 たとえば、午後2時に食材を買いに行ったり、午前11時から仕事を始めたり、夜型の場合は夜間だけ仕事をしたりする。周りに比べて、時間の調整が容易な人もいるだろう。

 ターフェによれば、あるチームメンバーが9時~5時の生活から抜け出すのに苦労していたため、チームメイトが午後に映画を観に行くよう提案したという。

 ターフェのチームでは1カ月間、非同期型の働き方を試行した後、結果報告と進捗状況の評価、そして必要な調整を行うために再び集った。「何度も繰り返し、自分たちのやり方を評価し、ペインポイントをどう解決するかを考えなければならない」と、ターフェは言う。

 そこには、その後の作業を進めるために必要な他者からのインプットを適切に予測し、計画を立てることも含まれる。「事前にわかることもあれば、時間をかけて理解できることもあった。(中略)多少の時間はかかったが、その後は非常に活力を与えるものになった」