
コロナ禍でリモートワークという壮大な実験が行われた結果、「どこで」仕事をするかは、かつて考えられていたほど重要ではなくなった。次の議論は、リモートワークの別の側面、すなわち従業員が「いつ」仕事をするかを決める自由だ。いまや非同期型の働き方は、人材獲得競争に勝ち、グローバルに分散した労働力を構築するために不可欠だ。では、組織が従来の固定的な考えから抜け出し、非同期型の働き方に移行するには何をすべきか。本稿では、新たな働き方を採用し、組織に浸透させるための戦略を紹介する。
この1年に多くの企業が、リモートワークが非常に有効であると理解した。PwCの調査によれば、調査対象となった雇用者の83%が、リモートワークへの移行は自社にとって効果的であると答えた。また、労働者の54%がパンデミック後もリモートワークを続けることを望んでいる。
いまや「どこで」仕事をするかは、かつて考えられていたほど重要ではないことが明らかになっている。労働者が切望するフレキシブルワークのもう一つの側面は、「いつ」仕事をするかを決める自由だ。
インターナショナル・ワークプレイス・グループの2019年の調査によると、フレキシブルワークを提供していない仕事は断ると答えた労働者は80%に上った。また、労働者の76%が、フレキシブルな勤務時間で働けるのであれば、現在の勤務先に留まることを検討すると回答している。
マイクロソフトのワークトレンドに関するレポートによると、リモートワークの増加によってよりフレキシブルな時間で働けるようになり、いわゆる「9時~5時」勤務がなくなりつつある。
従業員は、ますます非同期で働くようになり、同僚とは異なる自分のスケジュールで仕事を遂行している。「アシンクロナスワーク」と呼ばれる非同期型の働き方はいまや、現代のデジタル経済の一端を担い、人材獲得戦争において競争力を維持し、グローバルに分散した労働力を構築するために不可欠なものだ。
ハーバード・ビジネス・スクール教授で、Remote Work Revolutionを執筆したセダール・ニーリーは、次のように筆者に語った。「企業は、現代の労働構造の一部であることの意味を、深く考え直さなければならない。9時~5時、あるいは直接会って話すフェイスタイム文化の考え方は、実際のところ、デジタル化が進む経済にとって有用ではない」
ニーリーは、フェイスタイム文化の根底にあるのは、仕事が進捗していると感じるために、従業員を監視したり、目で見て確認したりする必要があるということだと強調した。とはいえ、生産的であるためには人々の仕事ぶりを見る必要があるという前提は、限定的であるだけでなく、誤りでもある。なぜなら、仕事の遂行にテクノロジーとオートメーションの利用がますます進み、そしてそれらは本質的に観察できないものだからだ。
非同期型の働き方は「デジタル経済に沿った、まったく新しい考え方だ」と、ニーリーは指摘する(ちなみに、ニーリー教授と筆者は、本稿について議論するためにライブでつながる時間が取れなかったため、非同期でコミュニケーションを取った)。
同様に、エグゼクティブサーチ会社のスレイトン・サーチ・パートナーズでエグゼクティブバイスプレジデントを務めるジェイ・ダプリルも、非同期型の働き方について次のように述べている。
「将来の形態であり、それを受け入れない企業は人材獲得競争で不利になるだろう。従業員には選択肢があり、それを求めているからだ。人材をめぐる競争は終わり、人材が勝利したのだ」
ダプリルと彼のチームは非同期で仕事をしている。「私は部下を信頼している。いつ来て、いつ帰るかを、彼らが私に伝える必要はない。仕事をどう完遂するかは彼らに任せており(中略)必要な時には、いつでもテキストメッセージを送ることができる。部下は自分でスケジュールを決めている。私は朝5時から仕事をしているが、部下にそれを期待してはいない」
ツイッターのエンジニアリング責任者であるマイケル・モンターノは、こう語る。「従業員から、そのような要望と、働き方や働く場所、働く時間について、より柔軟性の高いと選択肢に対する期待があることは間違いない。加えて、私たちはグローバルで分散した労働力を構築しているため、非同期的で働く必要性がある。それを受け入れるには、ツールやテクノロジーだけでなく、文化という要素が極めて重要だ」
では、組織が従来の9時~5時文化から抜け出し、非同期型の働き方に移行するには、どのように組織文化を変えればよいのか。以下にいくつかの戦略を紹介しよう。