
パンデミックの危機下においては、さまざまな苦難を抱える部下に対して寛容であることがマネジャーに求められてきた。だが、世界各地で制限緩和が進みつつある現在、かつての生産性を取り戻すべく、高い成果を上げるようにプレッシャーをかけたくなるのはもっともだ。しかし、専門家が口を揃えるのは、感情面のケアを考慮せずにプレッシャーをかけても、逆効果になることだ。実際、思いやりや配慮を示すことと、仕事を完遂させるように求めることはトレードオフではなく、両立しうるという。では、マネジャーは具体的にどう部下に接すればよいのか。専門家のアドバイスを紹介する。
パンデミックが始まって以来、マネジャーには、この世界的危機がもたらしたストレスに対処しよう奮闘する部下に理解を示し、寛容であることが求められてきた。
世界の多くの場所で制限緩和が進みつつあるいま、チームメンバーに対するコンパッション(思いやり)と、仕事を完遂させるアカウンタビリティ(説明責任)のバランスを、どう保つべきか悩んでいるマネジャーもいるだろう。
チームの目標を達成できなくても、締め切りや業績の期待値について柔軟であるべきか。チームメンバーに責任を果たすよう求めつつ、彼らが経験してきた、そしていまも続く苦難に対して、どう理解を示すべきか。こちらが寛容に対応することで、都合よく利用されるのを警戒すべきか。
筆者は、このような疑問を何人かの専門家に投げかけた。職場におけるモチベーションとコンパッションを研究する専門家は、まさにいま、こうした悩みを抱えるマネジャーにどのような助言を与えるだろうか。
共通していたのは、この1年間にわたって部下に見せてきた思いやりや気遣いを、いま途切れさせてはならないというアドバイスだった。また、部下が感情面でどのようなケアを必要としているかを考慮せずに、プレッシャーをかけるべきではないという。
ミシガン大学ロススクール・オブ・ビジネス名誉教授でAwakening Compassion at Work(未訳)の共著者でもあるジェーン・ダットンが指摘するように、「思いやりを持つということは、必ずしも基準を下げるという意味ではない」。
つまり、コンパッションとアカウンタビリティをトレードオフの関係としてとらえるのではなく、両者をどう組み合わせるかを考えるべきなのだ。
思いやりや配慮を示すことと仕事で高い水準を要求することは、一見相容れないが、どう対処すればよいのか。専門家のアドバイスを、以下に紹介しよう。