●都合よく利用されていると感じる場合に対処する

 締め切りの延長、仕事量の軽減、メンタルヘルスの問題に対処するためのタイムオフなど、この1年間で何らかの調整を求めてきたチームメンバーがいる場合、あなたは「都合よく利用されている」と感じることがあるかもしれない。

 自分自身は全力を尽くし、特別な計らいなしですべての仕事を成し遂げている場合には、なおさらそう感じるだろう。マネジャーは「自分がこの状況に耐えられるのだから、他の人も耐えられるはずだ」というように考えがちだと、ハーシュは言う。

 しかし、そのような考え方をしたところで、そして他人の苦闘と自分のレジリエンス(再起力)を比べたところで、何の役にも立たない。

 当然ながら、人の置かれた状況はそれぞれ異なる。そのため、特定の部下がこの状況を利用しているのではないかと思い込む罠にはまってはいけない。

 ヒルが説明するように、「相手があなたの寛容な態度を都合よく利用しているかどうかに目を向けるより、燃え尽きている他の人を助けるほうが、結果的にはよいはずだ」。

 部下に利用されていると考えるのではなく、相手の成績不振に直接対処する。チームメンバーの誰かが期待に沿う成果を上げられていない場合、その理由を理解し、根本原因をどう解決するかについて、本人とじっくりと話をするのがよい。

「モチベーションの問題か、ストレスか、ワークフローか、あるいはトレーニング不足か。現時点で実際に障害となっているものは何かを考え、該当する問題の解決に集中すること」を、ハーシュは提唱する。

 ヒルが提案するのは、チーム全体として考えることだ。チーム全体が生産的になれずに苦労している場合には、個人レベルではなく、集団レベルでこの問題に対処する必要がある。

 ●レジリエンスに力を注ぐ

 レジリエンスは重要な役割を果たす。「多くの従業員にとっての制限要因は、ストレスをはじめ、生活の中で起きるすべてのことにどう対処できるかだろう。ストレスを上手に扱える人もいる。ストレスを管理できる気質の持ち主だ。その一方で、サポートが必要な人もいる」と、ハーシュは語る。

 この1年でトラウマを経験したり、悲嘆と対峙しなければならなかったりした人には、特に支援が必要だ。

「いつになったら、調子はどうかと聞かずに済むようになるか」を考えるより、「生活を整えて、パフォーマンスを改善するために、どのような支援ができるか」を考えるべきだと、ハーシュは付け加える。

 もちろん、従業員がレジリエンスを身につけられるよう手助けするには、すべてがあなたの肩にかかっているわけではないが、マネジャーとして一役買うことはできる。

 ダットンが言うように、「人が強くなるには、いつも以上の創造力と継続的な努力を要する」。しかし、そうすることによって、パフォーマンスやコミットメントの向上というかたちで結実するのだ。

 チームのモチベーションを高めたい時、特にストレスが絶えずかかっている状況おいて有効な方法の一つは、チームの進歩を可視化することだ。「ポジティブな流れを維持するために、この1年間でチームメンバーがどれだけ成長したかが、具体的にわかるようにするとよい」と、ダットンは語る。

 たとえば、パンデミックの間に磨きをかけたり、新たに発見したりしたスキルや能力について、チームメンバーに発表してもらうのもよいだろう。依頼をする際には、そうしたことが何もなくてもまったく問題ない、と明確にしておくことだ。

 さらに、チームメンバーには各自の業務の背景にあるパーパスとのつながりを意識してもらうとよい。「自分の仕事がもたらすポジティブな影響について、全身で意識を注ぐ。生理的側面でも心理的側面でも、いわゆるブースター接種のようなものだ」と、ダットンは説明する。