国際組織のための2原則

 筆者らは、2つの新しいデザイン原則を見出した。これらは、リーダーが自社でリモートワークをスケール化させるにあたって、最適かつ包括的な組織モデルを特定するのを助けるものだ。

 ●組織の中核活動のタスクコンテクストを検証する

 これはリモートワークとオフィスワークのバランスを決める助けになるだろう。タスクコンテクストを検証するには、リーダーはタスクを効果的かつ効率的に実行するのに必要となる従業員間の「関係的交換」と「取引的交換」のレベルを評価する。

 関係的交換を伴うタスクには、イノベーションや知識創造、そして初期段階にある活動が含まれる。

 こうした活動では、個人が活気あふれる自然発生的な交流に関与する時に生まれる、一瞬一瞬の創造的なひらめきが重要になる。したがって関係的タスクは、オフィスで一緒に顔を合わせた状況で、最高のパフォーマンスが得られる。

 ある急成長中のテック企業のバイスプレジデントは、自分の組織がイノベーションを生み出し、知識を共有するためには、関係的交換が十分に含まれる組織モデルが不可欠だと強調していた。特に、新規採用者を組織文化に馴染ませる時には重要だという。

 これに対して、取引的交換を伴うタスクはルーチン化され、手順が決められていることから、デジタル交流に適している。こうしたタスクは、従業員が独立して作業を行なったり、バーチャルで相手と連携したりすることによって、効率的に成し遂げることができる。

 筆者らが話を聞いたリーダーは、そうしたタスクの例として、ソフトウェア開発、コールセンター、インサイドセールス、多くのサポート機能を挙げた。あるバイスプレジデントは、こうしたタスクをリモートワークで処理することで、自社のオフィススペースを3分の1削減できると見積もっていた。これは大きなコスト削減だ。

 当然のことながら、多くの活動は関係的交換と取引的交換の両者を伴う。したがって、それぞれの割合を調べることが極めて重要だ。また、関係的交換を必要とするタスクと、組織文化を浸透させる社交スペースとなる物理的オフィスの価値の相互関係を吟味することが欠かせない。

 強力な組織文化を持つテック企業のリーダーのほとんどは、自社のリモートワークポリシーに、一定の出社時間を義務づける点を強調していた。つまり、従業員は合理的な通勤可能範囲に居住する必要がある。

 いずれの場合にせよ、必要なバランスに応じて、オフィス中心(出社勤務>在宅勤務)かリモート中心(出社勤務<在宅勤務)か、いずれかのハイブリッドモデルを構築することができるだろう。