●人を迎え入れる

 人を非難することは、仲間外れを生み、不安や社会的な嘲笑を助長し、組織の文化に浸透させかねない。むしろ、無礼だと感じる振る舞いを正したいのであれば、相手を迎え入れて会話をしながら、振る舞いを変えるように努める。この助言は、対人関係のミスに対処するために、会話と理解と学習の扉を開こうというスミス大学のロレッタ・ロス教授の研究に基づいている。

 扇動者と個人的に、敬意を持って話し合うことで、人を傷つけるような振る舞いと向き合い、協働につなげることができる。扇動者を迎え入れる際は、必ず不作法な扱いを受けた人への支援を組み合わせて、悪循環を断ち切り、リーダーがインシビリティを認識して対応していることを示す。

 このような会話をする際は、非難や安易な判断は避けること。その振る舞いがもたらす影響に焦点を当てて、解決策をともに見つけるのだ。人は類似性や親近感に最もよく反応する。類似性や共通の経験に注目することにより、つながりを構築して信頼を育むための一歩を踏み出せるだろう。

 この一歩は、違いを踏まえて仕事をするうえで特に重要になる。同僚を共通のつながりを持つ1人の人間として見ることは、わかりにくい不作法の根底にある暗黙の固定観念を払拭することに役立つ。

 あなた自身が無礼な振る舞いを指摘された時は、敬意を払って話を聞き、必要なら謝罪する。リーダーとして公に謝罪することは、職場の文化に影響を与える強力な手段になる。

 ●バイアスに留意する

 慢性的にインシビリティを繰り返す人も、自分の振る舞いの影響に気づいていないかもしれない。このような人を「腐ったリンゴ」と考えるのをやめよう。私たちの多くは自分を立派な道徳的市民と考えているが、実際は誰もが未熟であることを認めよう。

 こうした態度は扇動者の防衛反応を和らげるかもしれない。私たちが他人に抱く否定的な連想や固定観念、思い込みは、場合によっては気がつかないうちに、自分の振る舞いに影響を与えるからだ。

 そうしたネガティブな考えは、人種差別や性差別、同性愛嫌悪、外国人嫌悪に関する長い歴史から生じる。これらの抑圧的な社会システムを、私たちの多くは支持しているわけではないが、そこから完全に自由になることは非常に難しい。私たちの振る舞いがこれらのシステムに影響され、それを助長することも少なくない。

 味方や傍観者は、好意を持っていても、敬意を払った振る舞いができない時もある。ニューヨーク大学スターンスクール・オブ・ビジネスのドリー・チュー博士が言うように、私たちは誰もが「それなりにいい人」になろうと努めている。さまざまなグループが社会から疎外されていることにまつわる文化的、社会的、歴史的な複雑さを理解すれば、自分のつまずきや間違いを修正するための学習の方向性が定まるだろう。 

 リーダーは、オンラインで偏見が現れるわかりにくい方法を正すことによって、手本を示すことができる。たとえば、研究によると、黒人女性の貢献はほかの女性ほど正確に記憶されず、誤ってほかの人の貢献にされることも少なくない。オンライン会議では、平等に発言できて、貢献が記録されていることを確認する。

 ●「細やかな気遣い」をおろそかにしない

 子犬のしつけや新しい料理のレシピ、家族の話など、会議の本題に入る前にメンバーの近況を知っておこう。表面的なやり取りで終わらせないこと。筆者らの研究によると、従業員に個人的な関心を持つことは、繁栄や自信という感情につながる。

 生産性に関係ない時間としてではなく、日常生活で起きていることを共有する空間と時間(5分だけでも構わない)をつくる。たとえば、その日にあったよいことを1つずつ披露するなど、全員が参加できる短いアクティビティを用意する。物静かな人や新しいメンバーは自分が歓迎されていると感じ、個人的なつながりを育む機会になるだろう。

 組織が長期的な事業運営の中核としてバーチャルオペレーションを導入する際は、マネジャーは、侮辱や冷笑といった無礼な振る舞いが従業員やチームの機能に与える影響に敏感にならなければならない。

 社会で疎外されているグループの従業員にとって、不作法な経験が繰り返されることは、その組織に自分の居場所がない、自分の視点が歓迎されていないという意味になるかもしれない。マネジャーは個人的なつながりを築く機会を提供し、敬意に関するチームの規範のアカウンタビリティを果たすことを通じて、インシビリティを解毒できるだろう。


"5 Ways to Reduce Rudeness in the Remote Workplace," HBR.org, August 19, 2021.