本人が招いたオーバーロードを
軽減するための組織的アクション

 ゼネラル・ミルズの取り組みは、先進的な組織が、従業員の不安をあおるオーバーロードにどのように取り組むことができるかを示している。

 パンデミック下でリモートワークに移行することは、同社ならではの問題を伴う挑戦となった。従業員が新しい働き方に慣れるだけでなく、パニックによる買い占めで食料品店の棚が空になり、主力製品の需要が急増したのだ。

 こうしてゼネラル・ミルズが過去に経験したことのないコラボレーションの流れが生じた。2020年3月に調査を開始した時点で、従業員がコラボレーションに費やす時間は1週間当たり平均21.4時間(マイクロソフト・ワークプレイス・アナリティクスによる社内データをもとに算出)であった。それが7月末には、20%増えて平均25.7時間になった。

 このコラボレーションのデータと従業員の経験に関するデータを結びつけて検証したところ、この時期に従業員のネガティブな感情も高まっていることがわかった。その結果、ストレスやバーンアウトが加速し続けないようにするための改善策を理解し、実行することができた。

 具体的な例の一つは、製造と現場の従業員に向けた「火曜日はケアの日」プログラムだ。週1回、すべてのリーダーに対し、ターゲットを絞って優先順位をつけた集中的なリマインダーを提供し、職場全体のウェルビーイングとチームのダイナミクスを支援するように促した。メッセージは毎回、リーダーが「知っておくべきこと」と「やるべきこと」の簡単なヒントを取り上げ、週ごとに自分自身のケア、他者のケア、ビジネスのケアと、対象を変えている。

 たとえば、最近の火曜日は「ビジネスのケア」について。変化を経験する時期は、リーダーは明確で一貫したコミュニケーションが不可欠であることを「知っておくべき」であり、そのために「やるべきこと」のヒントを提案している。

1. あるべき姿と現在の状況を人々が思い描けるようなストーリーを語る。
2. 変化が重要だとあなたが思う理由を共有し、人々の心をつかむ。
3. 質問や振り返るための時間をつくる。

 こうした明快なリマインダーによって、実用的な行動のステップや追加のリソースへのリンクを定期的に提供していることは、リーダーや従業員に前向きに受け取られている。

 これは重要なステップとなった。新型コロナウイルスの影響が続く中、大半の企業は会議やメールを増やすことで、従業員のバーチャルなエンゲージメントを持続することを重視していた。対照的に、ゼネラル・ミルズは適切な分析を行い、そうした対策が完全に間違っていることを理解した。

 断片化された時間と、ネガティブな気分および従業員の疲労感との相関係数は0.55であった。つまり、コラボレーティブ・オーバーロードが従業員のウェルビーイングに非常に大きな影響を与えていることがわかったのだ。

 解決策は会議の回数を増やすことではなく、時間の使い方を工夫することだった。それが唯一の手段というわけではないが、ゼネラル・ミルズはデータを活用し、コラボレーションの要求の変化に、チームや個人がうまく対応できるようにしている。特に新しいチームがハイブリッドで柔軟に働ける職場環境に向けて準備を進める際は、そうした工夫が重要になる。

 こうした分析から、重要な3つの行動が浮かび上がった。

・「金曜日の自由時間」という方針を設ける:毎週金曜日の午後2時以降は共有カレンダーに予定を入れないよう指示して、「深い仕事」やメールの確認、充電などに専念できる時間を確保した。

・ウェルビーイングとストレスに焦点を当てたパルスサーベイをより頻繁に行う:従業員の声に高い頻度で耳を傾けることから、ターゲットを明確にした行動が生まれた。たとえば、最も重要な仕事を優先することと、セルフケアに集中することの重要性について、シニアリーダーから従業員に対してより頻繁に、目に見える形で注意を促すようになったのもその一つだ。多くのシニアリーダーはビデオメッセージを使い、台本のない真摯な対話をチームと(そして会社と)より頻繁に行い、優先順位を決めることやセルフケア、試行しながら学ぶアプローチの必要性を強調した。

・コラボレーションが多く、ストレスやネガティブな雰囲気が強い部署を対象とする「働き方改革」のトレーニングとツールの開発・導入:「働き方改革」の介入では、まずリーダーが従業員のコラボレーションと雰囲気の状況を説明し、組織がどのように行動を変えることができるかにについて対話を行った。続いて、部署ごとにグループセッションを行い、より効果的な実践方法や、個人のコラボレーティブ・オーバーロードを防ぐ方法を教えた。

 こうした取り組みの結果、ゼネラル・ミルズは現在も続くコロナ禍の在宅勤務において、コラボレーティブ・オーバーロードが増加するリスクを効果的に軽減することができた。「働き方改革」のセッションを受けた部署は特に、成果が見込まれている。

 同社のチームは平均で従業員一人当たり週8時間、コラボレーションの時間が減少している。チームとしても付加価値のない会議を減らし、会議を全体としてより組織的に行うようになった。いずれの変化も、ストレスレベルや雰囲気に悪影響を与えることはない。

 さらに、これらのチームから得られた教訓は、新しいチームの立ち上げや、従業員のウェルビーイングを支援して社内のすべてのチームが効果的にコラボレーションできるようにするための、より広範なチーム活動に組み込まれている。

先を見据えて

 あらゆるレベルの従業員がコラボレーティブ・オーバーロードの負担を感じており、パンデミック後の働き方に移行する中で終わりは見えてこない。

 アナリティクスを適切に用いれば、現代のハイパーコネクテッドな仕事の世界で、高い効率性を見出すことにつながるだろう。こうした状況でも従業員がより効率的に働けるように取り組む先進的な企業は、業績と従業員の定着率の両方で、重要な優位性を手にするはずだ。


"Collaboration Overload Is Sinking Productivity," HBR.org, September 07, 2021.