「常にオン」の文化の非効率性を軽減する
コラボレーティブ・オーバーロードは、単に量の問題ではない。目には見えないが同じくらいやっかいな問題は、要求の多様性から生じる認知的なスイッチングコストだ。
コラムニストのジェニファー・シニアは『ニューヨーク・タイムズ』紙で、新型コロナウイルスの影響により、仕事や家庭で「2分間単位の活動のスタッカート」が際限なく続くようになり、多くの人がマネジメントに苦労していると述べている。
認知心理学者によれば、メール1件に返信するだけで、元の状態に戻るリカバリータイムは最大64秒に達する。カリフォルニア大学アーバイン校で情報学を担当するグロリア・マーク教授の研究では、少し長めの中断を挟むと、仕事に完全に戻るまでに最大23分かかる。
練習すれば中断にうまく適応できるようになるが、この適応力を身につけるためにはコストを伴う。頻繁に中断される人は仕事量が増え、ストレスやいら立ちが増し、時間に追われ、より多くの努力を強いられるのだ。
残念ながら、新型コロナウイルスはスイッチングコストを高騰させている。会議は1時間から30分に短縮され、1日により多くのコラボレーションを詰め込もうとする。インスタントメッセージはこれまで以上にスイッチングコストの原因になりやすく、やり取りは夜遅くまで続く。ある企業では、午後6時~12時のインスタントメッセージが52%増えた。
コネクテッド・コモンズがコラボレーティブ・オーバーロードに関して実施したこの10年間の研究によると、より効率的なコラボレーター、すなわちネットワークの中で最も大きな影響力を持ち、周囲の人から奪う時間が最も少ない人の特徴の一つは、「常にオン」であることのやっかいなコストを削減するために、仕事を構造化していることだ。彼らは、たとえば次のような方法で周囲よりも18~24%効率的に仕事をしている。
・自分にとって最適なリズムに合わせて、内省的な時間を確保する:たとえば、朝一番にメールに返信した後、2時間は周囲を遮断して内省的な作業をする。あるいは早い時間にクリエイティブな作業をして、メールは1日3回、1回につき30分を返信に使う。
・メールにトリアージのルールを適用する:メールはメールを生む。そして、人は解決して気分がよくなるような、急ぎの要求に応えたくなるものだ。より効率的な人は、たえず混乱を受け入れるのではなく、メールを分類し、決まった時間に処理することが多い。
・「スタンディング」会議でチームの問題解決を迅速に行う:より効率的なリーダーは、過剰な混乱を場当たり的に発生させるのではなく、たとえば週1回のスポット的なミーティングで小さな問題を議論する。メンバーはスラックやマイクロソフト・チームズなどのコラボレーション用プラットフォームに議題を投稿し、ミーティングの前にそれぞれが解決できることに対応する。時間が経つにつれ、誰に何を頼めばいいのかをチーム全体が理解するようになり、リーダーのもとに集まる小さな問題の数が大幅に減るだろう。