変わりゆく職場のダイナミクスの中で
自分のキャリアを管理する

 筆者が協働した複数のエグゼクティブが、ここまで述べてきた原則を実践し、成功している。

 クライアントの一人で、現在の会社に25年以上勤めるエグゼクティブは、90日間の再オンボーディングプランを作成して、自分の上、下、そして横のつながりで影響を与えるべき主なステークホルダーのマップを描いた。また、ビジネス上の目標、戦略、実行、そして人材育成など、成功のカギとなるクライテリアに力を注いだ。

 そのうえで、そうした同僚とミーティングを持つペースを定めて、それぞれの注力領域で目標通りの業績を上げられるようにするとともに、継続的なフィードバックを得て、同僚の重点事項に付加価値を加える方法を探った。

 再オンボーディングプランを開始してからわずか1カ月で、同僚は彼のイニシアティブに感銘を受け、彼からのフィードバックを求めるようにさえなったという。この訓練は、本人の気力を高める効果もあり、さもなければ周囲の変化を不快に感じていたにもかかわらず、レジリエンスと楽観的な姿勢を維持することができたという。

 別のクライアントで、フォーチュン500企業のバイスプレジデント(VP)は突然、競合から引き抜かれたVPやディレクターに囲まれて働くことになったという。しかし、会社に関する幅広い知識や経験があることから、こうした「新人」のメンター役として熱心に対応した。

 メンターの役割を果たす人は、そうでない人に比べて高位のポジションに昇進する確率が6倍高いという最近の研究を彼は知っていたが、筆者のコーチングを受けて、彼はメンティーである新人から多くを学ぶことに力を入れた。

 現在の競争的で、かつてないほど変化の激しい職場において、自分のキャリアを管理するのは容易ではない。いまの会社に留まると決意している場合であっても、新規採用者が入社し、昔からの同僚が去っていけば、あなたの今後の昇進や個人的な充足感に深遠な影響を与える可能性がある。

 しかし、本稿で紹介した4つの戦略に従えば、いまの会社に留まるのであれ、辞めるのであれ、自分の潜在価値を最大化する形で、職場の変化に対処できるはずだ。


"When Everyone's Quitting ... Except You," HBR.org, September 13, 2021.