●教える側になり、教えられる側にもなる

 自分自身の再オンボーディングプランを実行に移すだけでなく、新規採用者のオンボーディングを支援することを検討する。そうすることで、自分がリーダーであるという認識が強まるとともに、競争に向かいがちな職場のダイナミクスに調和をもたらせるだろう。

 ただし、会社の伝統を知る賢い世話人になることと、適応力を持つ未来の変化の仲介者になることの間で、慎重に適切なバランスを取ることを忘れてはならない。

 あなたがベテランであれば、会社でやっていくための知恵を共有することに価値があるのは間違いない。しかし、伝統を拠り所にすることで、相手のモチベーションを抑え込んだり、変化を妨げたりしないように注意する。

 最良の戦略は、教えると同時に学ぶことだ。賢いメンターとして自分の経験を共有しつつ、新規採用者の新鮮なインプットを積極的に引き出す。オープンな姿勢を維持すれば、物事が変わりゆく中でも、変化に取り残されることなく、同僚に対してより大きな影響力を持つことができるだろう。

 ●自己満足せず、常にコンピテンシーを磨く

 周囲の変化を最大限に活かすために、前述したすべての戦略を実行しても、あなたはまだ満足できないかもしれない。新しい同僚と同等の立場にはなれないと感じることもあるだろう。その直感が正しいと判明する可能性すらある。その結果、どこか別に自分の居場所を見つけなければならなくなるかもしれない。

 同じ会社に長く在籍しすぎることには、不利益がある。憤慨したり、モチベーションが低下したりする場合には、なおさらだ。

 金銭面でも、人件費を抑制するために、あなたの給与が新規採用者よりも低く抑えられ、昇給が頭打ちの状態になるかもしれない。これは、優秀な人材が収益にプラスをもたらすことを企業が理解しているため、既存の従業員の昇給よりも、外部の求職者に高い報酬を支払いたがることを意味する。

 同じ会社に留まり続けることのもう一つの不利益は、いつまで経っても新規採用者と同等のレベルに昇進できない可能性があることだ。もっと悪いことには、あなたが50歳を超えている場合、予期せず解雇される可能性さえあることが研究によって示されている。

 したがって、現在の会社であなたが成長できるかどうかを考えよう。最適な機会が訪れる場合に備えて、いまの会社を辞めるという選択肢を捨てないことだ。また、できるだけ多くの選択肢を確保しておくためにも、元同僚との関係は断ってはならない。

 筆者がかつて協働したことのあるリーダーは、何人かの同僚が会社を去ることを知り、大きなショックを受けた。それを個人的に受け止めて、最初は自分が見捨てられたと感じ、次に、それまで考えたことすらなかった雇用市場における自分の価値を心配するようになった。

 さらに、彼はエゴに囚われて、「どうして彼らがあの仕事を得られたのか」と思うようになった。優越バイアスに陥り、同僚の能力を過小評価し、自分の能力を過大評価した。

 自分の価値に関する劣等感と、元同僚に対する優越感が重なり、彼は明るい気持ちで新たな冒険に踏み出すことなく、内向きになっていった。最終的に、彼は元同僚との有意義な友情を失っただけでなく、自分が転職活動をしようと思った時に助けを得られるかもしれない、外部のつながりをも失った。

 彼と同じ間違いをしないでほしい。そうではなく、辞めていく同僚との人間関係に投資しよう。新規採用者との関係に投資するのと同じように、だ。