●対人関係スキル
カウンセリングや心理療法の分野では、セラピストとクライアントが協働し、互いをパートナーとして重要な課題に取り組むことを「治療同盟」(セラピューティックアライアンス)と呼ぶ。この考え方は、経営幹部とアドバイザーの関係にも当てはまる。
高いスキルを持つ経営幹部は、支援してくれるアドバイザーと協働して、ともに成果を生み出そうとする。前述したサンドラは、問題解決のプロセスをアドバイザーと「共同所有」したいと考えていた。みずからが問題解決に責任を持とうとしていたのだ。
フィリップに欠けていたのは、手ごわい問題の解決自体を部外者に丸投げしてしまった点だ。社外のアドバイザーだけが問題解決のプロセスに責任を持てばよいと考えていたのである。しかし、アドバイザーが単独で変革を推し進める能力には限りがある。
心理療法の一種である「交流分析」の用語を用いれば、アドバイザーとともに問題に取り組むサンドラのアプローチは、「大人と大人」の関係を志向するものだ。これは、相互の敬意に基づく関係である。
フィリップのアプローチは「親と子ども」の関係を志向するものだ。一方が他方に対して、自分のほうが上、もしくは下の地位にあるかのような態度を取る。
熟達と自立は、高いパフォーマンスを発揮するための重要な属性であり、リーダーの成功を後押しするカギになることが多い。しかし、あらゆる強みがそうであるように、この2つの要素も過剰に用いられる場合がある。
他者の力を上手に借りることは、リーダーにとって重要なスキルだ。とりわけ変化が激しく、要求が過酷な時代には、すべてを自分一人でできるリーダーなどいないからだ。
そのようなスキルに長けているリーダーは、自分自身の成長を加速させ、みずから率いる組織のパフォーマンスを高めることができる。
"So You Hired a Consultant. Here's How to Get Your Money's Worth," HBR.org, September 17, 2021.