アドバイザーによる支援を上手に受けるスキルは、主として3つの要素で構成される。あなたが何らかの問題にぶつかり、アドバイザーの力を借りたいと考えている場合は、最大限の成果を得るために、以下の点に留意する必要がある。
●状況分析
まず、次のように自問する。「どのような支援を受けることが、最大の成果をもたらすのか」
問題はいくつかのカテゴリーに分けることができる。たとえば、シンプルな問題もあれば、やっかいな問題もある。賢明な経営幹部は、自分たちが直面している問題がどのようなタイプの問題かを慎重に検討する。問題のタイプを把握することで、どのような支援が必要かを知ることができるからだ。
たとえば、専門家による技術面の知識や情報が必要な場合もあるだろう(問題を直接的に解決する支援)。あるいはリーダーシップに関するコンサルティングを必要としている場合もあるだろう(問題解決のためにチームのリソースを整理して、リードすることへの支援)。
この状況分析の段階で、経営幹部がしばしば犯す間違いが2つある。
1つは、時間や好奇心、あるいはスキルそのものが足りず、目の前の問題を正しく理解できないために、問題を過度に単純化して考えてしまうという誤りだ。前述のフィリップが、これに該当する。
もう1つは、少数のアドバイザーの言葉ばかりを信用してしまうという誤りだ。この場合、アドバイザーがみずからの強みというレンズを通して問題を認識すると、深刻な結果が生じかねない。古いことわざにある通り、「手持ちの道具箱にハンマーしか入っていなければ、すべての問題が釘に見える」という結果を招くのだ。
筆者の経験からいえば、リーダーの身近にいるアドバイザーがコミュニケーションや戦略という分野の専門家の場合、そのリーダーは、オペレーションの問題をコミュニケーションや戦略の問題と位置づけてしまうことが多い。
●謙虚なマインドセット
サンドラは、好奇心旺盛なリーダーだった。組織心理学者であるカール・ワイクの言葉を借りれば、持論を訴える時は自分が正しいという前提で行動するが、他人の話を聞く時は自分が間違っているという前提で行動していた。
自分が間違っているという前提で他人の話を聞くというのは、当たり前のことに思えるかもしれないが、アドバイザーの支援を活かすには、支援されたいという意思を持つ必要がある。
相手から学ぼうという意思を持たない人にとって、これを実践することは難しい。フィリップの場合、問題の厳密な定義にこだわった結果、幅広いインサイトとソリューションの恩恵をみずから拒絶することになった。
筆者はしばしば、経営幹部に対して「正しくある」ことと「有効であること」の違いを教える。多くのリーダーがそうであるように、フィリップも正しくありたいという思いを強く抱いていた。
「わかりません」「私は間違っているかもしれません」と口にするのは、勇気が必要だ。人間は大きな権力を持つと自信過剰に陥りやすく、リーダーは誰かに助けを求めると、自分が弱い存在になったように感じることがある。
しかし、実際には、自分の限界を知り、それを前提として謙虚に行動することは、強さの証明である。有効なリーダーシップを通じて成果を上げたい人にとっては、自信過剰に振る舞うよりも、謙虚に行動することのほうが手堅い道だ。