政府による救済は結局、納税者にとって有益となったのですか。そして航空会社側は、救済に責任を持って応えましたか。

マコーン:税金の投入に対し、納税者はもっとよい見返りを得るべきだった、あるいは税金による投資の一部を株式化する努力がなされるべきだった、という論争はたしかにあります。

 しかし結局のところ、航空業界は公共財です。すべての人に恩恵をもたらす有用性があり、多くの点で金融システムや配電網と似ています。昨年における最優先の課題は、業界が生き残れるよう万全を期すこと以外にはなかったと思います。それは達成されました。

ミラー:同感です。私たちは経済の保険を買ったのです。「払いすぎたのではないか」とも言えますが、もし買っていなければどうなっていたでしょうか。

ルイス:航空会社が直面する不確実性を踏まえれば、とても簡単には批判できません。とはいえ、違う対応をしてほしかった部分を一つ挙げるとすれば、パイロットに早期退職とレイオフを強いたことです。そのために現在はパイロットが足りず、欠航が増えました。救済の主な目的は、雇用を維持することでした。

 もう一つの機会損失は、国際的な渡航制限をめぐる政府間の協調が欠けていたことです。いら立たしく、変わりやすく、ばらばらで一貫性を大いに欠いた体制を人々は強いられました。しかし、これは航空会社の落ち度ではありません。

「危機を無駄にするな」という古い格言があります。パンデミックの渦中、多くのイノベーションが生まれましたか。

マコーン:表面的には、イノベーションよりもサバイバルのほうが焦点でした。とはいえ、安全性の面では間違いなくいくつかのイノベーションがありました。座席の抗菌コーティング、紫外線による機内の消毒、乗客の生体認証に関する一連のさまざまな発展などです。こうした発展のすべてが危機の克服につながるでしょう。

 加えて、業界レベルでは、文字通り何十もの新しい航空会社が世界中で設立されています。これほどの逆風の中でも、起業家精神を発揮して野心を追求する余地が、航空業界にはまだ多くあるのです。

 また、航空宇宙やその他の航空分野でもイノベーションが増えています。民間宇宙旅行、eVTOL(イーブイトール:電動垂直離着陸機)、ドローンなどです。

オストロワー:危機を経た米航空会社に対し、A~Fの成績をつけるよう私は頼まれることがあります。しかし今回のような危機に関しては、合格/失格で考えるほうがいいでしょう。航空各社は操業を続けており、国有化されてもいません。昨年の数カ月間は、それを達成するには奇跡が必要と思われました。

 最近の空港や機内でのけんかは、いったい何がどうなっているのでしょうか。

オストロワー:簡単な答えがあるかはわかりませんが、私が言いたいのはこうです。国の政府が公衆衛生に関する決定を下す時、それを最終的に実行するのは誰なのか、と。機内での暴力が急増しているのは、客室乗務員が公衆衛生義務に関する審判にならざるをえないという事実が、少なくとも部分的には原因です。

 プライベートジェット航空の経営者は、舌なめずりをしているでしょうね。

オストロワー:プライベート航空はパンデミックで莫大な恩恵を受けています。私は先日、飛行機の展示会に行ったばかりですが、そこは実質的に小型飛行機メーカーのショーケースと化していました。ビジネストラベルはいま、非常に活気づいています。

 ただし、その勢いを後押ししているのは、感染や機内暴力への不安よりも、航空会社のスケジュールがあまりにも頻繁に変わるという事実です。プライベート航空なら、A地点からB地点までルート変更や欠航なしに行くのだとわかる、確実性を与えてくれます。これこそが最大の魅力です。

マコーン:プライベート航空は、エリートな顧客層に向けたニッチな業界と思われがちです。それは事実ですが、プライベート飛行を使いたい人の数は、これまで実際にプライベート飛行をしてきた人の何倍もいて、成長の余地があります。

ルイス:その通りです。そしてこの分野でもイノベーションがありました。チャーター、分割所有、航空クラブ――ほかにも10年前には存在しなかった数多くの方法で、プライベート航空への試乗と参加が簡単になりました。

 航空業は魅力を失ったのでしょうか。業界はいまも、働く場所として人気ですか。

オストロワー:航空会社の魅力はなくなりません。世界を見て回る旅が無料でできる、という恩恵があるからです。これはどんな時でも、人々を引き付ける要因になるでしょう。そして航空宇宙や、電気宇宙工学のような未来技術の分野で刺激的な発展があり、人材を強く引き付けています。地上から離れる魅力は、常に人々を魅了してきました。それは今後も続くのではないでしょうか。

マコーン:航空と旅行とはつまり、世界をつなげることであり、若者にとっては常に魅力的なのです。


"Where Does the Airline Industry Go from Here?" HBR.org, October 06, 2021.