「連帯感」の文化を築く
私たちはこの1年半で、人は生まれつき、意味と目的を求めてやまないものだと、改めて強く意識するようになった。
在宅勤務が長引き、その間に内省を強いられた人々は、自分の仕事の価値や、それにどのような意味があるのかを問い直している。そのうえ、パンデミックが招いた孤立感が、本当の帰属意識に対する欲求を強めている。
マッキンゼー・アンド・カンパニーの最近の調査も、これら2つの要因が、現在の離職率の急増に大きな役割を果たしていることを裏付けている。
同調査によれば、従業員が退職を決めた、あるいは退職を検討している理由の上位2つは、自分の仕事が組織に評価されていないと感じたこと(54%)、そして職場に帰属意識が感じられなかったこと(51%)だ。
筆者が話を聞いたHR担当エグゼクティブの一人は、2つの要素の重要性を次のように説明した。
「私たちの組織ではパーパスと帰属意識の両者を重視しています。この2つは密接に関わっているからです。従業員には、自分の行動のすべてが、組織にとってだけでなく、互いにとっても重要であると感じてほしいのです。自身の目的に充実感を覚えるだけでなく、目的意識を共有していると感じてもらいたい、そう考えています。私たちはそれを連帯感と呼んでいます」
HR担当エグゼクティブは揃って、優秀な人材をつなぎ留める組織文化の基本としてパーパスを挙げた。筆者自身の研究も、これを立証している。
3200人以上のリーダーを対象とした15年間にわたる研究では、パーパスが言葉だけでなく、行動として実際に有効化している組織は、従業員が互いに公平に接し、大義のために力を尽くす可能性が3倍高いことがわかっている。
彼らの話で特に印象的だったのは、パンデミックが始まるずっと前から連帯感のある文化を築いてきたと、誰もが強調したことだ。
ある人は次のように言った。「明確なパーパスのある組織文化がなければ、間違いなく危機に陥っていたでしょう。そうなった時に、すぐに解決できる万能薬はありません。でも、どうか時間を無駄にせず、いますぐ文化の創造を始めることです」