職場体験の共創を従業員に促す

 前述したマッキンゼーの調査によると、多くの雇用主は大量離職の主な動機について、従業員がより高い給与の仕事、あるいはワークライフバランスや柔軟性を求めることだと誤解している。

 しかし、これらの要因は、帰属意識や信頼できる同僚の存在といったように、より関係性の深い要素に比べると、雇用主が考えているほど重要ではなかった。とはいえ、雇用主が職場体験(ワークプレイスエクスペリエンス)の設計を誤れば、トラブルを招きかねない。

 マッキンゼーの調査では、60%近くの従業員が新しい仕事を探す可能性は低いと答えているが、今後も探さないという意味ではない。雇用主の64%は、現在の離職率について今後6カ月間変わらない、あるいはさらに高まると予想している。

 より多くの企業がリモートワークの機会を従業員に提供することで、彼らが大切にしている自宅やコミュニティを離れる必要がなくなれば、人材の確保も容易になるだろう。

 あるHR担当エグゼクティブは、筆者にこう語った。「非合理的で画一的な指示を出してオフィスへの復帰を要求し、ハイブリッドワークへの移行に失敗したという恐ろしい話を、他社の知人から聞いています。そうした方針は『従業員のニーズは重要ではない』というメッセージを伝えるだけです」。また、別のエグゼクティブは次のように話している。

「いまこそ、従業員の声に耳を傾け、彼らのより深いニーズを理解しなくてはなりません。幼い子どもがいるシングルマザーと、外向的な性格で自宅にこもっていると頭がおかしくなりそうな年配の従業員に、同じ方針を当てはめることはできないのです。
 組織は、自社のビジネスにとって何が最善であるかという目安を設定し、現場のマネジャーにできるだけ裁量を与えることです。ビジネス面の要件を満たしつつ、チームの柔軟性を実現するための最善な方法を、チームみずからが考えなくてはなりません」