連帯感の文化を明示するために、組織がどのようなことを実践してきたかを尋ねると、HR担当エグゼクティブは以下のようなアイデアを筆者に教えてくれた。

 ●マネジャーとの会話の中で、個人的な願望を定期的に話題にする

 多くの組織がパーパスを掲げるだけで満足し、あたかも意味があるかのような錯覚に陥っているが、真のパーパスを持つ組織は、連帯感をマネジメントの実践に適切な形で組み込んでいる。

 マネジャーが部下と有意義な会話を交わし、仕事上や個人としての目標に向かって進んでいるかどうかを確認できる、簡単なアプローチを用意しよう。

 あるHR担当リーダーは、チームメンバーが養蜂の副業をしているというマネジャーの話を教えてくれた。そのマネジャーは1対1の会話の中で、「ハチミツの仕事はどんな調子ですか」と聞くように心がけているという。

 従業員の人生そのものに関心を示すことは、彼らの帰属意識を高め、自分は重要だと思われているという感覚を支える。

 賢明なマネジャーは、そのような個人的な興味が仕事の妨げになるかもしれないとは考えない。従業員がどのような人間かという興味を示すことによって、彼らが日々の仕事にも同じだけの創造性とエネルギーをもたらすようにうながすことができるのだ。

 ●現在進行中の「生きたパーパス」に光を当てる

 従業員が一人ひとり違うように、組織のパーパスとの結びつき方も人それぞれだ。

 組織のパーパスを個人として体現している人がいた時に、それを認めることは、驚くべき強化作用をもたらし、他の人も同じようなことをしようという意識を持つようになる。あるHR担当リーダーは、そのような従業員の話を感慨深く振り返った。

「私たちはヘルスケア(製薬)企業ですから、すべてが患者のためにあります。
 ある従業員は、癌との長い闘病生活の末に母親を亡くした後、地元のホスピスセンターでボランティア活動をしていました。そして、施設の改装資金を寄付してほしいと、会社のフィランソロピーグループに提案したのです。そして、それは実現しました。
 私たちの会社では、よくあることです。会社のコーポレートコミュニケーショングループでは、4万人の従業員が幸せな気持ちになれるように、このいきさつを映像インタビューにまとめました」

 ●リモートワーカーの社会的つながりを強化する

 在宅勤務がもたらす孤立感は、私たちのコミュニティ意識を分断してきた。帰属意識を育むには、ズーム疲れを起こすことなく、従業員がつながりを感じられる独創的な取り組みが必要になる。

 さらに悪いことに、人々が集まる場所で起きうる自然発生的な交流の多くが失われ、リモートワークによって、私たちのデジタル交流はいつも一緒に仕事をする同僚にほぼ限られ、組織の細分化がさらに進んでいる。

 ある企業は、コーヒーのギフトカードを従業員に提供し、チームの垣根を超えて新しい同僚と交流し、ネットワークを広げ、より広範な組織的視野を維持できるように支援している。