相手を心から思いやる方法をマネジャーに教える
「この1年半で学んだことがあるとすれば、親切という極めて小さな行為であっても、どれだけ大きな影響を与えられるかということです」と、HR担当エグゼクティブの一人は筆者に語った。
パンデミックを機に、私たちは誰もが持っている人間性について、以前より意識するようになり、困難な状況にある人々を思いやる機会は、絶え間なく増え続けている。
しかし、職場においてマネジャーが思いやりを示すことは、いつも自然なこととは限らず、居心地のよいことでもない。マネジャー自身、気まずさを覚え、線引きが難しくなると感じるかもしれない。
だが、思いやりを示すことは押し売りではなく、すべての従業員が同程度の配慮を望んだり、必要としたりするわけでもない。
別のHR担当リーダーは、次のように振り返った。「当社の従業員は、本当に傷ついています。疲れ切っているのです。思いやりを示すことをすぐさま、リーダーシップの中心に据えなければならない状況でした。従業員の自宅に食事を届ける、家賃やチャイルドケアの費用を援助する、途方に暮れた人が存分に泣けるようにするなど、マネジャーの権限を増やし、具体的な行動を取れるようにしたのです」
今日のリーダーにとって、共感と思いやりはいまや、必要不可欠なものとなっている。そこで、あらゆるレベルのリーダーがこれらを上手に実践する方法を、以下に紹介しよう。
●親切とサポートを示す振る舞いを後押しする
マネジャーには、必要に応じて小さな思いやりのある行為をできるように、裁量とリソースを与えなくてはならない。
フードデリバリーアプリで使えるギフトカードを贈る、感謝や関心事を手書きのメモで伝える、誕生日や記念日を覚えておくといった振る舞いはすべて、従業員を単なる労働力以上の存在として見ているというメッセージを送ることになる。
●みずから模範となり、相手に自分の弱さを見せても安全だと示す
多くの人々は、ポジティブで真剣な顔を崩さず、苦悩を隠して、助けを求めようとしない。プライドの問題だという人もいれば、すでに別の問題で多くのストレスを抱えている同僚に、これ以上負担をかけたくないという人もいる。
リーダー自身が助けを求めたり、自分が苦境にあることを率直に認めたりする姿を周囲の人々が見れば、自分たちも助けを求めてよいのだと思えるようになる。
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先に挙げたマッキンゼーの調査では、「自発的退職率が通常より高いか」という質問に、47%の雇用主が「いいえ」と答えている。
あなたが幸運にも、その47%に入っているとしても、状況が変わるはずがないと思ってはいけない。人材をつなぎ止めている理由を探り、さらに努力を続けることだ。
あるいは47%に入っていない場合には、その理由を深く検証する。問題に対処するために、金銭や表面的な特典を与えるのはやめよう。そして、従業員が早く辞めたいと思いながら働くのではなく、心が踊るような状況で働ける企業文化に向かって、進化を始めるのだ。
"To Retain Employees, Give Them a Sense of Purpose and Community," HBR.org, October 11, 2021.





