●自社のエコシステムに影響力を及ぼす
CEOは、顧客やサプライヤーなど、自社のエコシステムを構成する社外のステークホルダーたちの行動に、ある程度の影響を直接及ぼせる。リーダーはそうした対外的な関係を通じて、特にステークホルダーたちとの共通の関心事であるテーマに関して、みずからの影響力とインパクトを拡大できる。
強力なエコシステムを持っていれば、自社のパーパスをより力強く表現し、そのパーパスをさらに実現させ、分極化を生み出す環境を解消できる可能性が高まる。
・明確なパーパスを伝える
会社のパーパスは、従業員の意欲や能力と、その会社の対外的なインパクトの間の懸け橋だ。分極化を是正できるかどうかも、そのような対外的インパクトの中に含まれる。しかし、もっぱらメディアを通じた短いコメントやソーシャルメディアへの投稿を通じてパーパスを伝えようとすれば、逆効果になりかねない。簡潔すぎるあまり曖昧だったり、定義がはっきりしなかったりするメッセージは誤解されやすいのだ。
幸い、リーダーがその気になれば、直接関わりを持つステークホルダーたちと、もっと濃密なやり取りをすることは難しくない。リーダーは、顧客や社外のステークホルダーと関わる時、シンプルでわかりやすい言葉遣いを心掛けるべきだ。ベン&ジェリーズは、自社が支援する社会運動についてウェブサイトで明示している。このことを通じて、混乱や誤解を避けることができる。
・敬意あるやり取りが行われるようにする
敵対的なトーンでコミュニケーションがなされている時は、偽情報と戦うだけでは分極化を緩和できない。本稿筆者の一人(ルフェーブル)が運営するモア・イン・コモンは、社会の亀裂を解消するための取り組みを実施している。同団体の調査によると、ドイツ人の70%、フランス人の86%は、言論空間で交わされるコミュニケーションが敵対的な度合いを増していることに懸念を抱いている。
ビジネスリーダーは、(少なくとも自社のプラットフォーム上で)ステークホルダーたちがどのようにコミュニケーションを取り合うかに影響力を及ぼすことができる。有害な言葉や対立を煽るような言葉の使用を禁じることで、対立を和らげられるのだ。
ツイッターは最近、「汚い」メッセージが送信される前に探知して、注意喚起する機能を導入した。試験運用期間のデータによると、こうした注意喚起により、34%の人はメッセージを修正したり、削除したりして、11%の人はそれ以降のメッセージで以前ほど攻撃的な言葉を使わなくなった。
・志を同じくする企業の連合体を築く
企業は次第に、職場での行動規範、DE&I(ダイバーシティ、エクイティ、インクルージョン)重視の姿勢、そして気候変動関連の取り組みなどの問題で足並みを揃えるようになっている。複数の企業が連携して行動することで影響力とインパクトを拡大できるうえに、分極化に対処するための新しいスキルや戦術に関する情報交換を行い、それを上手に活用できるようになる。
たとえば、ニュースメディアの超党派の業界団体であるニュースメディア・アライアンスは、メンバーが協働して、政策提案や報道の自由と独立を守るための活動を行っている。
・新しいソリューションに投資する
リーダーは、社内と社外で分極化を深刻化させる状況を直接是正するような新しいプラットフォーム、ツール、コンセプトに投資してもよい。たとえば、異なるグループ間の有効なコラボレーションをうながすテクニックや、互いの共通点を見出して、そこに光を当てるためのテクニックも、そうした投資の対象になりうる。
異なるグループ間の熟議を後押しすることで、分極化を緩和する取り組みを行う団体に寄付してもよいだろう。そのような団体の一つが、アメリカ・イン・ワン・ルームだ。この団体はスタンフォード大学に拠点を置き、米国で生きる多様な人たちの政治的議論を後押ししている。