(1)達成感や喜び得られる活動を日々のスケジュールに組み込む

 健全な情緒を保つには、2種類の活動が必要となる。すなわち、達成感を与えてくれる活動と喜びを与えてくれる活動だ。鬱病に対する心理療法として確立されている行動活性化療法(BA)は、この原理に基づいている。

 一般的な方法としては、達成感を与えてくれる活動と喜びを与えてくれる活動を見つけて、それぞれ毎日、朝・昼・夜の3回行う。いずれも、ごく簡単なことでよい。たとえば、喜びの源泉は、太陽の光がたっぷり入る窓際でモーニングコーヒーを飲むことかもしれない。達成感の源泉は、運動することかもしれないし、ベッドの下の掃除機がけかもしれないし、仕事のタスクを消化することかもしれない。

 人によっては、この2種類の活動を毎日、朝・昼・夜の3回、つまり計6回分の活動をあらかじめスケジュールに入れておき、日課として確実に行うようにしている。気分が落ち込んでいる時には、こうした活動から得られる喜びが、いつもより小さくなるのが典型だ。そうした場合には、自分が楽しめる活動を見つけるのは少し難しくなるかもしれない。その意味でも、事前に活動を予定に入れておくのは助けになる。

 まずは、ブレインストーミングから始めて、自分が喜びや「うまくできた」という感覚、あるいは達成感を得られる活動をリストアップしてみよう。行き詰まった時には、あなたことをよく知る人に助けてもらうのがよいだろう。

 この対処法は、直接的または間接的に生産性を高めることにもつながる。「うまくできた」という感覚や達成感を与えてくれる活動は、そもそも生産的なものであり、このアプローチの構造自体が、生体リズムと情緒にポジティブな効果を与えてくれる。

(2)通常の仕事量を減らす

 気分が落ち込み、ストレスレベルが高い時に、通常と同じ100%の出力で働こうとするのは賢明ではない。とはいえ、まったく働かないのも一般的に賢明とはいえない。それはなぜだろうか。

 定期的な仕事は、1日に規則性を与えてくれる。定期的な活動という枠組みは、生体リズム(食事や睡眠に関連するものを含む)を管理する助けになる。仕事や社交といった定期的な活動による規則性がなければ、生体リズムは乱れ、鬱状態が悪化する傾向が高まる。

 通常の活動の50%というのは、仕事が足りていない状態と、自分自身を過信してオーバーワークに陥っている状態との間にある、ほどよい地点だ。

 このアプローチならば、生産性もそこまで下がらないだろう。また、ディープワークや他の本当に重要なタスクを優先せざるをえなくなる。仕事量を通常の50%に制限することで、中途半端に生産的な活動を捨てやすくもなるのだ。

 ただし、50%という数字は絶対的なものではない。状況に応じて別の数字にすることもできるが、その背景にある考え方は取り入れることをお勧めしたい。