(3)難易度(高・中・低)が異なるタスクを交互に行う
簡単なタスクばかり、あるいは非常に困難なタスクばかりを長時間続けて行わないことも、精神衛生を良好な状態に保つための要素の一つだ。その根拠はどこにあるのだろうか。
これは一部には、子どもや発達障害がある人が学習効果を最大化する方法を観察した結果に由来する。こうしたグループの人々は、ネガティブな感情が爆発的な行動として表れることが多い。非常に楽な状況、あるいは非常に難しい状況ばかり続かないほうが、人間の行動が改善し、幸福感が高まることも明らかになっている。
そんなことをわざわざ言われる必要はないと、あなたは思うだろう。自分の能力がギリギリまで試される状況が長時間続く場合と、その間に自信を持って行うことができる、慣れているが有意義かつ生産的だと感じられる活動(芝刈りやマンスリーニュースレターの執筆など)が所々に散りばめられている場合を想像し、比較してみれば簡単にわかることだ。
1日3回、達成感を得られる活動をスケジュールに入れる際には、難易度を考慮に入れて、1つは難しく、1つは簡単で、もう1つは中程度の活動にすることを目指そう。
(4)ディープワークの習慣をつくり、セルフコントロールの必要性を減らす
もしあなたが鬱状態に陥っているなら、セルフコントロールが必要なことは、なるべく控えたいと思うだろう。気分が落ち込んでいる時は、あらゆることに通常以上の努力が必要だと感じられるからだ。
極めて高い生産性が求められる仕事をする際に必要となる、セルフコントロールの負担を軽減する最善の方法は、強力な習慣を身につけることだ。すなわち毎日、同じ時間に2時間程度、ディープワークの時間をルーチンとして設定する。
毎日、同じ時間に、同じ場所で、同じ合図をきっかけにディープワークを始めるようにすると、それが習慣となり、継続して行うことができるだろう。
こうした習慣は、仕事のある日には毎日、同じ時間に行うほうが、ばらばらの時間帯に行うよりも維持しやすい。たとえば、月曜日は午前10時、水曜日は午後3時にといった具合ではなく、毎朝10時なら10時と決めて、ディープワークに取り組む。そうすることで、いつ、どこで行うかをそのつど考える「決断疲れ」を減らす助けにもなる。
しっかりと継続して行うことができれば、この習慣と結びついた合図がディープワークの引き金となり、セルフコントロールの必要性は薄れていく。この効果は研究によって立証されているが、セルフコントロールがなくても維持できるほど習慣化させるには、数カ月かかる可能性もある。
継続していくことで、ディープワークに取りかかり、決められた時間、集中し続けることもずっと容易になるだろう。最終的には、重い腰を上げるような感覚を持たずに、自動的にディープワークを始められるようになる。
私の場合、スポーツドリンクを用意して、グーグルホームで60分、90分、120分とタイマーをセットしてから、ディープワークを始めることにしている。最初のうちはこのルーチンを忘れることもあったが、それがディープワークの合図として確立すると、維持できるようになった。
タイマーを使うことにした当初の理由は、2時間ずっと集中できるように自分自身を訓練するため、そして決められた時間の中で、自分の集中力がどのように変動するかを理解する助けになると思ったからだ。タイマーは自分のペースをつくり、非生産的なオーバーワークを回避し、活動の浮き沈みのサイクルをなくす助けにもなる。
タイマーを使う第3の理由は、私の場合、1時間経つと集中力が低下することに気づいたからだ。ディープワークが2時間目に入る時には、集中力を維持するための工夫が必要になる。タイマーは、その役割を果たしてくれるのだ。
ひとたび習慣として確立できれば、自分がどのような気分にあっても、どれだけ強い感情を抱いていても、それを維持するのはずっと簡単になる。