自分のキャリアは自分自身で切り開こう

 このアドバイスを実践するには、自律的マインドセットが必要である。すなわち、自分自身のキャリアパスの構築や能力開発を雇用主ばかりに頼るのではなく、みずから全責任を取るという思考だ。

 他の3つのアドバイスと比較すると、これは全般的に最もポジティブな効果をもたらす。また、筆者らが関連を検証したすべての項目に恩恵をもたらすことも発見した。つまり、自律的マインドセットを持つ人はそうでない人よりも、キャリア上の客観的な成功も、主観的な成功も、いっそう大きくなる可能性が高いのだ。

 加えて、自分のキャリアに全責任を負う人は、現在の仕事で士気(たとえば、高い職務満足度や組織コミットメント)や業績評価がより高くなり、組織から離脱する行動(たとえば、離職意思)が減少する場合が多い。

 そのため、積極的に自分のスキルセットを開発しなさいというアドバイスや、「自分のパラシュートは自分で準備せよ」というアドバイスは、従業員と雇用者の双方にとって、4つのアドバイスの中で最も役に立つ。

 ●提案

 自律的マインドセットを持たない人は、他人、たとえば現在の雇用主がキャリア開発の面倒を見てくれると考えている。かつてはこの考え方でもうまくいったかもしれないが、今日ではそうはいかない。その理由の一つとして、変化し続けるテクノロジーやグローバル化に伴う競争の激化に対して、企業が素早く対応する必要があることが挙げられる。

 当然、従業員は21世紀の組織に求められる新たな知識やスキルセットを自力で獲得しなければならない。したがって、知識を増やしたり、スキルを高めたり、能力を拡張したりするために、積極的にトレーニングの機会を探し出し、みずから舵取りして自己開発することを、筆者らは推奨する。自分のキャリアと関連する研修コースに参加するのもよいだろう。

 さらに、自律的マインドセットで従業員の士気や業績が上がり、組織からの離脱が減少することを考えれば、従業員の成長を促すことが企業の優先事項であることは自明だと言える。

 重要な点は、継続的な学習や専門能力の開発にみずから積極的に取り組むことである。イーロン・マスクが従業員に送ったアドバイスに従おう。キャリアを向上させるには、「どうすれば物事をよりよくできるかを常に考え、自分自身に挑戦する」とよい。

自分の組織や業界の外で人脈を構築しよう

 自分が所属する組織や業界の外で仕事に関連した人間関係を築くには、バウンダリレス(境界なき)・マインドセットを持つことが必要だ。

 そのようなマインドセットを持つ人は、客観的にも主観的にも、キャリアのより大きな成功を手に入れている。しかし、いまいる職場では内にこもっている可能性が高く、そのことが彼らを採用すべきかどうかの判断に悪影響を及ぼしかねない。

 全体的に見ると、バウンダリレス・マインドセットはキャリアの成功に恩恵をもたらすものの、その可能性は自律的マインドセットよりもかなり低い。つまり、自律的マインドセットがキャリアにもたらす効果と比べると、ずいぶん弱いのだ。

 ●提案

 いまいる部署、組織、業界のサイロの外に出て、より広範な社会的ネットワークを築く方法を検討しよう。自分と直接関わるワークグループの外にいる人たちをランチに誘ったり、コミュニティでボランティア活動をしたり、仕事とは関係のない趣味に勤しんだり、自分と近しいネットワークや専門分野以外のイベントや会議に出席したりすることで、それは可能になるはずだ。

 グーグルの元CEOエリック・シュミットも同様のアドバイスを口にする。「新しい友人に出会う機会にイエスと言おう」。ただし、どのアドバイスを優先するかを決める時は、最初に自律的マインドセットに目を向けることを筆者らは勧める。エネルギーの注ぎ方という観点で見ると、そのほうが効率がよいからだ。