ただし、ここで終わりにしてはいけない。社会心理学者のハイディ・グラントは、このような状況では相手について考えるべきであるにもかかわらず、私たちは自分自身のことを語る傾向があると指摘する。
「おかげでリラックスできました」あるいは「おかげで幸せな気分になりました」と、相手の行為からどのような恩恵を受けたかを説明するだけでなく、称賛を送ることが大切だ。
「わざわざ~していただいて」「本当に~がお上手で」「あなたの責任感の強さがわかります」というように、言葉に気持ちを込めよう。そうすれば相手は自分自身をポジティブにとらえ、あなたに理解され、感謝されていると感じることができるだろう。
あなたがマネジャーならば、直属の部下たちに感謝を示すだけでなく、ほかの従業員にも同じことをするように勧めたいと思うだろう。まずは、あなたがロールモデルとなることだ。
たとえば、チームメンバーの一人ひとりに対して、今年の尽力に心からの個人的な感謝の気持ちを伝える時間を持つ。あるいは感謝するための時間と空間(対面またはバーチャル)を設定することだ。
なかには、口に出して感謝の気持ちを述べるのは気恥ずかしいと感じる従業員もいるかもしれない。そうであれば、感謝の気持ちを記したメモを貼る壁を設置したり、従業員が互いに称賛し合うための専用チャンネルをスラックに設けたりすることから始めるのもよいだろう。
また、ミーティングの冒頭で、チームメンバーに何か一つ感謝していることを挙げてもらい、それを互いに共有し合う「チェックイン」の時間を取り入れることもできる。
『ハーバード・ビジネス・レビュー』編集部では毎年、米国の感謝祭の休暇直前の火曜を「パイ・デー」として祝い、同僚に感謝のカードを書く機会(とそのための文房具)を提供している。同僚たちは、前年までにもらったカードの多くをデスクに飾っている。
こうした習慣を取り入れるのに、誰もが大変だった1年を振り返るホリデーシーズンほどふさわしい時期はない。始めるなら、いまだ。
"Giving Thanks at Work: An HBR Guide," HBR.org, November 24, 2021.