価値創造の新たなルール

 かつて企業の価値は有形資産にひも付いていたが、現在はそうではない。

 知的財産の査定サービスを提供するオーシャントモは、企業価値が有形資産から無形資産へと移行する傾向を30年にわたり記録している。同社の2020年の報告によれば、S&P500企業の評価額の90%は無形資産で構成されている。当然ながら、無形資産にはさまざまなものがあり、ブランド価値、知的財産、のれんなども含まれる。しかし、これらは1980年代よりもずっと以前から知られている。

 反転企業においては、無形資産の中で主要な成長源は、パートナー同士で価値を創造し合う時に生じるネットワーク効果である。伝統的企業が変革を遂げる一つの方法は、ユーザー間、パートナー間、そしてパートナーとユーザー間での、価値の創造と交換を取りまとめる能力を備えることだ。それにより規模拡大の手段ももたらされる。アトムからビットに変えることで、利益率とリーチが向上する。内向きから外向きへと変わることで、アイデアとリソースが増大する。

 企業の反転には、外部からの干渉と、パートナーの過失や怠慢というリスクが伴うのも確かだ。パートナーが価値提案の一翼を担っている場合、その提案に落ち度があれば、ブランド側がダメージを受けるかもしれない。

 筆者らの一人の家族は、エアビーアンドビーのホストの家を借りた時、シャワーもトイレもないことに気づいた。サービスに関する記載の中で、この事実は周到に省かれていたのだ。

 エアビーアンドビーはすぐに介入してホストに注意を与え、借り手にはもっとよい部屋を無料で提供した。サードパーティの提供者に頼ることは、パートナーの製品・サービスの質に対する厳密なキュレーションを必要とし、自社および他のパートナーの製品・サービスを素早く交換する能力も求められる。

 また、自社のデータとシステムを外部者に公開する企業は、高まるサイバー攻撃のリスクにも直面しやすい。したがって、他者のデータに責任を持って、しっかりと管理しなければならない。そしてデータを入手するならば、それを共有してくれた相手に価値を還元し、保護を提供する必要がある。

 結局のところ、こうしたリスクを理解して緩和する企業は、閉鎖的なままメリットもデメリットも遠ざけている企業よりも、業績が大幅に優れているのだ。

 反転企業の構築は、数々の重要な示唆をもたらす。最も重要な点として、サードパーティの価値を連携させるうえで必要となる組織のスキル群に、複数の欠落がある可能性が高い。デジタル技術だけを導入しても、内向きの組織構造が外向きに機能する組織へと変わることはない。

 経営幹部は、パートナー関係の管理、パートナーのデータと製品の管理、プラットフォームのガバナンス、そしてプラットフォーム戦略を理解して実行しなければならない。未知の人々に対し、自社にないアイデアを共有してくれるよう動機づける方法を学ぶ必要もある。

 バークレイズ銀行、ナイキ、ジョンディア、アンベブ、シーメンス、アルバートソンズなど多岐にわたる企業が、このようなプラットフォームを機能させるため、そして反転の度合いを高める自社を運営していくために、20万件に上る人材を募集している。実際、内向きに留まる企業は、上向くこともできないのだ。


"Digital Transformation Changes How Companies Create Value," HBR.org, December 17, 2021.