社員全員が美意識を高くもつように促す
サイバーエージェントでは、執行役員/クリエイティブ統括室 室長の佐藤洋介氏に話を聞いた。
同社は要件(1)については、「21世紀を代表する会社」「チームサイバーエージェント」という言葉が社内に浸透し、チームの一員としての自分事化が促され、互いに助け合い、補いあう文化が醸成されている。社内スローガンでは「会社を楽しもう」というメッセージが掲げられ、会社に縛られるのではなく、個々人が会社を使って楽しむという、新しい日本的経営のあり方とも言える会社と社員の関係性がメッセージとして表現されている。
要件(2)については、デザイナー以外の社員も美意識を高く持つように促している。美意識を高くするために、例えばコーポレート・アイデンティティ(CI)の運用ルールをシンプルかつ厳格化することで、デザインの希少性を大切にする意識を醸成した。CIの利用を通じて、社員とデザイン部門がコミュニケーションを取る機会が増え、数年経った今日においては、デザイナー以外の社員もデザインについて自然と考えるようになっている。
要件(3)については、ユーザー体験を重視し、まずモックアップを作り、それをもとに議論・検討する進め方が定着している。クリエイティブを合議制で決めるのは難しく、数字的なファクトより実際にモックアップを触った感想を重視しているのだ。投資対効果など数値的検証は行うが、数値は主でなく従であり、数値に偏り過ぎないようにしている。その分、経営層がモックアップ段階においてもクオリティ面を厳しく追求している。
3社とも試行錯誤する中で、デザイン経営を実践する組織の3要件を推進し、経営層から現場までデザインを重視かつ自分事として実践している。それにより、近年多くの日本企業が分析や計画に偏った経営に陥っているのに対して、企業の意思と経済性のバランスの取れた経営を推進している。