2022年の注目点

 2021年は現実より期待のほうが大きかったものの、今後1年で勢いづきそうなトレンドがいくつかある。

 ●若い世代の声がより大きくなる

 グラスゴーで開催された気候サミットでは、ベビーブーマー世代とX世代のリーダーが目標の緩やかな改善に向けた協議でつまずく一方で、スウェーデンの環境活動家グレタ・トゥンベリが若者の先頭に立ち「ブラ・ブラ・ブラ」(形だけで中身がない)だと批判した。ミレニアル世代や社会人になったばかりのZ世代が声を上げている。

 マッキンゼー・アンド・カンパニーでは、コンサルタント1000人以上が上司に宛てた公開書簡で、化石燃料企業のようなクライアントと仕事をすることは「地球を取り返しのつかない姿に」しかねないと訴えた(同社の従業員は80%が40歳以下なので、彼らコンサルタントはミレニアル世代やZ世代だといえるだろう)。

 人材争奪戦が続き、価値観を追求する熱意がある労働者、特に労働人口の50%以上を占める若年層が力を持っている。彼らがそれを使うことを期待したい。

 ●加速と反動を伴うESGの主導権争い

 ESGへの資金流入は今後も続くだろう。その圧力の多くは、やはり若い世代からのもので、富裕層が家族からインパクト投資にもっと力を入れるよう求められている。ただし、ESGのそもそもの意味をめぐる反動が生じ始めている。

 ブラックロックの元幹部はあるリポートで、ESGは「危険なプラシーボ」だと指摘する。彼の懸念はもっともだ──「ESG」を称するファンドに資金を投入すれば、気候変動や不平等などの問題に本気で取り組むことになるのだろうか。その答えはまだわからず、ESGの世界は定義が確立していない。

 ESGの指標を提示する企業は増えており、取り組みは前進している。しかし、それはまだ始まったばかりだ。多くの問題や不備が整理されるまで、辛抱しなければならない。私たちが当たり前のように使う3つの主要な財務諸表も、何世紀もかけて進化してきたではないか。

 ●基準や規制の増加

 ESGの無秩序さを管理するために、規制当局や監視機関は、企業が従うべき基準を引き続き策定するだろう。国際財務報告基準(IFRS)を策定する民間組織のIFRS財団は、気候変動の情報開示基準を取りまとめる国際サステナビリティ基準審議会(ISSB)の設置を発表した。企業が環境へのインパクトを報告し、事業にとって重要な環境・社会問題を評価する方法の調整が進むはずだ。どういうわけか、基準ができると世界は回る。

 ●社会におけるビジネスの役割の継続的な拡大

 この2、3年、企業やNGOのリーダーは、LGBTQの権利や人種間の平等、民主主義など、あらゆることについて声明を出し、行動を起こす必要性を感じている。私たちが抱える最大の問題を政府が解決する能力に対して、根本的な欠落が生じているいま、企業にとって、顧客やコミュニティ、投資家、従業員からの期待はこれまで以上に高くなるだろう。

 税金、CEOの報酬、腐敗など、これまで避けてきた問題(ポール・ポルマンと筆者が共著Net Positive〈未訳〉で論じている「部屋の中の象」でもある)が、取締役や最高経営幹部を直撃するだろう。たとえば、G7諸国は2021年に、法人税の最低税率を設定することで合意した。このような動きは今後も続くだろう。

 ●失われた課題の再検討

 新型コロナウイルスのパンデミックの最中も、より広範なサステナビリティの課題が減速することはなかったが、一部は後回しにされた。たとえば、プラスチックや包装の問題は、2019年には大きな懸念となっていた。しかし、使い捨ての医療装備が必要になり、家庭への出荷も増えたため、対策はなかなか進展しなかった。

 それでも株主は忘れていない。デュポンでは、プラスチック汚染の追跡を進めるように求める株主決議が81%の支持を得た。プラスチックや人権など、さまざまな問題は依然として続いており、企業は再び焦点を当てなければならない。

 ●大きな課題を解決するためのパートナーシップの強化

 2021年は、最大級の環境・社会問題に取り組むためのパートナーシップが加速度的に増えたようだ。たとえば、6つの大手銀行が協力し、鉄鋼業の脱炭素化を目指すと発表した。また、大量の車両を保有するさまざまな分野の企業が結束して、EVの充電や補助金に関する基準の設定を連邦政府に求めている。このようなコラボレーションの多くは始まったばかりだが、2022年末までには成果が示されるはずだ。

 あなたが関心を持っているトレンドや刺激的なストーリーは、まだまだあるに違いない。本稿で取り上げたものを含めて、筆者が注目したさまざまなニュースや発表を集めたリストを投稿したので参考にしてほしい。よい1年になりますように!


"Sustainable Business Went Mainstream in 2021," HBR.org, December 27, 2021, Updated January 06, 2022.