●結果ではなくプロセスに焦点を当てれば情熱が生まれる
確固たる価値観が安定性をもたらすことに加え、結果の不確実性ではなくプロセスに焦点を当てることで、確実性を生み出すことができる。それによりコントロール感を得るだけでなく、成功する可能性が高まり、貢献し続けるためのさらなる情熱が生まれるのだ。
たとえば、リーダーシップの影響力や昇進の可能性にプラスの影響を与えるキャリア上の行動をいくつか定める。チームミーティングのたびに洞察力に富んだ貢献や質問をする、四半期ごとに自分の役割を超えた機会を引き受ける、毎週主要なステークホルダーとコーヒーを飲む、毎週2人と知り合いになる、毎月幹部に戦略的で収益に影響を与えるアイデアを提供する、毎日同僚が行った有益な取り組みを評価する、などだ。
そして、このような行動をその日の気分にかかわらず、計画通りに実行することを目標にする。これは予測不可能で、昇進や転職などの目標を達成して初めて明らかになるキャリア成功の「遅行指標」ではなく、自分で自由に試すことができる行動の「先行指標」に焦点を当てるということだ。
仕事やキャリアのプロセスに集中することの利点は、たとえ何が起こっても、価値ある貢献者という自分を形成できることにある。そして、自己認識が向上すると内発的なモチベーションが高まり、自分を必要としている人に才能を提供できるようになる。
冒頭で述べたように、昇進を喜ぶ年もあれば、新しい上司に報告を上げるようになったことに不満を抱く年もあるだろう。このような浮き沈みの中で、多くの優秀な人材は自分のキャリアに幻滅してしまう。よりよい結果を求めて衝動的に決断を下し、もっと自分の情熱に適したものがあるはずだと辞職してしまうこともある。
しかし、研究によると、情熱を追求することは過大評価されているだけでなく、雇用者にとって魅力的な人材になるための知識、ネットワーク、習得スキルなどのキャリア資本を制限することがある。
そのため不確実性の高い時代には、安定したキャリア行動に力を注ぎ、望む結果に近づくにつれて一貫性と洗練性を重視するほうがよい。そうすれば当初のキャリア目標を達成するか、少なくとも自己効力感とレジリエンスを身に付けて、キャリアを新たな価値のあるものにすることができる。
●ラーニングアジリティを身につけ将来の変化の先を行く
環境が変化する中でキャリアを成功させるためには、自分の価値観を見極め、明確な意図を持って働き、優れた仕事をするプロセスに投資することが重要だ。しかし、これらは主に現在のあなたに依存している。
長期的な成功のためには、もう1つ重要な要素があり、それはあなたがどのように進化するか、つまり「どのように」学ぶかと関係している。「ラーニングアジリティ」(学習機敏性)と呼ばれるものだ。これを身に付けることで、キャリアに実際的な価値をもたらすだけでなく、変化し続ける世界で優れた成果を上げることができる。
ラーニングアジリティが高い人は、適応力があり、好奇心を持ち続け、内省的で、防御的な態度を最小限に抑え、深く根付いたメンタルモデルを捨て去り、よりパーパスに意識を向けたメンタルモデルをつくることで、キャリアを管理している。
そして、ラーニングアジリティの高さは、報酬や昇進の頻度、CEOとの距離の近さ、リーダーシップ能力の認識など、非常にポジティブなキャリア目標と有意な相関関係があることが研究でわかっている。
シンプルな内省を通じて、ラーニングアジリティを高めることから始めよう。1日の終わりに10分間のジャーナリングを行い、次の3つを自分に問う。「今日、私は純粋な好奇心を持っていたか」「今日、私は自分の視点に固執して防御的になっていなかったか」「今日、何か新しいことを学んだか、過去の自分の信念を疑問視したか」
ゆくゆくは、内省のジャーナルのパターンに目を向けることで、将来の成長のために、メンタルモデルや行動を変える機会に自然と目が向くようになるだろう。
私たちを取り巻く不確実性は、今年だけでなく、その先もさらに高まる可能性がある。このような不安定な状況では、現在のキャリアで優れた成果を上げ、将来の計画を立てることは難しいと感じるかもしれない。しかし、本稿の戦略に従うことで成功し、個人的にも充実した長期的なキャリアを築くことができる。
"Setting Career Priorities When Everything Is Uncertain," HBR.org, January 07, 2022.