●戦略的意思決定の枠組みを確立し、ポートフォリオ戦略を立案する

 評価を行い、それをさまざまなシナリオに適用したら、事業ポートフォリオに関する戦略的意思決定の枠組みを確立する。具体的には、以下の点を検討する。

・どこを変革するか:中核事業とそれをサポートするビジネスモデルの炭素強度を低減するために投資機会を特定する。

・どこを拡張するか:M&Aを実行したり、新たな事業やビジネスモデルに投資したりする機会を特定する。

・どこを切り離すか:どの事業や資産を売却の検討対象にすべきかを決定する。

 当然ながら、そのようなロードマップを策定するプロセスは平坦ではない。さまざまな投資機会について、具体的には事業単体としての投資機会と自社の事業ポートフォリオの一部としての投資機会の両方について、徹底した評価が必要となる。

 ●財務指標以外にも目を向け、長期にわたる取り組みを続ける

 財務指標だけで考えてはならない。次に示す要素の一部もしくは全部について、特に考慮することが必要だ。すなわち、残余排出量、長期的なポートフォリオのバランスを取るための指標、地域性と市場、規制の影響とテクノロジーに関わるリスク、ビジネスモデルの新規性と成熟性の度合いである。

 また、計画を立案するだけで終わりではない。企業リーダーは計画を実行に移す過程で、そしてそれ以降も定期的に、ビジネスユニットごとの炭素予算(カーボンバジェット)と残余排出量を割り振らなければならない。現在、各ビジネスユニットに資金の割り振りを行っているのと同様の取り組みが必要とされるのだ。

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 ネットゼロを目指す動きが加速している状況が、意思決定者にとって戦略上の課題であることは間違いない。しかし、それは同時に戦略上の機会でもある。

 自社の事業ポートフォリオが炭素リスクにどの程度さらされているかを徹底的に理解することから出発すれば、自社にとってマイナスの影響を抑制し、価値創造の機会をとらえるために、戦略的にどのような動きを取るべきかが見えてくるはずだ。


"How to Evaluate Your Company's Carbon Risk," HBR.org, January 06, 2022.