キーマンは医師、政府レベルでのアジャイルなアプローチも必須

――日本でのデジタルヘルスの普及に向けて、何がフライホイール(弾み車)になると思いますか。

小川貴久
アクセンチュア
ビジネス コンサルティング本部
ストラテジーグループ マネジャー
医師

長野県で総合診療を経験した後、整形外科専門医として日本各地で多数の手術を経験。ハーバード公衆衛生大学院を卒業後、リアルワールドデータベースを用いた研究に従事、高齢者やリハビリを中心とした臨床研究を行う。現在は、公共サービス・医療健康を担当

小川 キーマンはやはり総合診療医だと思います。総合診療医は一つの臓器を専門とするのではなく、患者さんを物語の中でとらえ、家族や地域の健康を多職種と連携してチームで支えるという専門性を磨いてきた医師たちです。

 KISA2隊のメンバーの多くが総合診療医であることからもわかるように、多職種チームで患者さんの診療にあたることを得意としています。会津でも、素晴らしい総合診療医の先生方が、訪問診療などを通して地域全体の医療を支えています。こうした、地域の健康を担う医師としての役割を担う総合診療医こそが、今後患者情報を病院や介護事業者と共有するハブとして、デジタルヘルスを普及、活用し、地域全体のウェルビーイングを支えていくカギを握っていると考えています。

藤井 私は政府の役割にも期待したいと思います。デジタル庁は4カ月という短期間でワクチン接種パスポートのアプリを世に送り出しました。このスピード感は画期的です。旧姓併記のマイナンバーカードを読み取れないといった問題も発生しましたが、素早くローンチし、ユーザーの評価を確認し、すぐに改良するというアジャイルアプローチを取ることで、迅速に問題に対応しています。

 デジタル活用にはこうしたアジャイルなアプローチが必須です。政府レベルでこうした動きが広がれば、今後、デジタルヘルスが普及する可能性が大きく高まっていくと思います。

石川 コロナウイルスへの対応を評価・検証することに加え、将来やってくる可能性のあるパンデミックなどの危機を、データを活用してどのようにマネジメントするか、という観点も重要です。次の世代の安心・安全、ウェルビーイングも見据えて、現在取るべきアクションを検討すべきだと思います。その未来と現在をつなぐのが、RWDです。

 たとえば、新型コロナワクチンの接種後に、日本では「不具合があればここに電話してください」と書かれた紙を渡されましたが、電話をしても医療的なアドバイスを受けるだけで、副反応情報としては登録されません。一方で米国の場合は、一般市民がSNSで発信した情報を含めて、ワクチン接種後の副反応情報がすべてデータとして残る仕組みになっています。

 データを残すことは、未来のために資産を蓄積することなのです。RWDのパワーを次の世界のために活かすという発想で、デジタルヘルスの普及を急ぐべきだと思います。

[本稿の関連リンク]

  • アクセンチュア ライフサイエンスサービス

https://www.accenture.com/jp-ja/industries/life-sciences-index

  • 日本におけるデジタルヘルスのいま

〜グローバルサーベイにみるデジタルヘルス活用の現状と課題
https://www.accenture.com/jp-ja/insights/health/digital-adoption-healthcare-reaction-revolution