
2022年を迎えても、新型コロナウイルス感染症のパンデミックが収束に向かう気配は見えない。企業にはコロナ危機だけでなく、技術革新に対応し、DE&Iを実現して、政治的な混乱に立ち向かい続けるという難題が課せられている。不確実性を乗り越えるために、本稿では、2022年以降の仕事のあり方を左右する11のトレンドを紹介する。
2021年が始まった頃、私たちの多くが世界は再び平常に戻るだろうと予想していた。新型コロナウイルスのワクチンが出回り始め、あと数カ月もすれば全員がオフィスに戻れるだろうと考える経営幹部が多かった。
ところが、2021年は予想以上に不安定な1年となった。新型コロナウイルスの新たな変異体や大規模な人材争奪戦、過去最高の離職率、そして数十年に一度の高いインフレ水準が重なったのだ。
2022年も不安定さは増す一方だろう。新たな変異体の出現が続き、リモートワークが一時的に復活するかもしれない。ハイブリッドな働き方は、いつ、どこで、どのように働くかをめぐって従業員間にさらなる不均衡を生み出す。年間給与額の増加がインフレに追いつかず、実質的な賃金カットに直面する従業員も多いだろう。
このような現実が、長期的な技術革新、DE&I(ダイバーシティ、エクイティ、インクルージョン)の継続的な取り組み、そして、これからも続く政治の混乱と不確実性の上に積み重なる。
2022年に職場に不安定さをもたらす11のトレンドを以下に紹介しよう。
1. フェアネス(公正さ)とエクイティ(公平性)が組織にとって決定的な問題となる
人種や気候変動の問題から新型コロナウイルス・ワクチンの配布状況まで、公正さの問題を核とする議論が社会の火種となっている。筆者らがS&P500の収支報告を分析したところ、決算説明会でCEOが公平性、公正さ、インクルージョンの問題について話す頻度は、2018年から658%増加していた。
しかも、公正さと公平性にまつわる課題は新たな形で表れている。
・フレキシブルワークを利用できるのは誰か。従業員の柔軟な働き方を認めるマネジャーと、そうでないマネジャーが混在する組織が見受けられる。
・生活費の安い地域に従業員が転居した場合、どう対応するか。仕事の成果が変わらないとしても、雇用主はその従業員の報酬を引き下げるべきか。
・昨今の労働市場では、企業は新たな人材を採用するために20%の報酬プレミアムを支払っている。既存の社員よりもずっと高い報酬を新入社員に支払うのは、公正なことだろうか。
・企業は特定セグメントの従業員に対象を絞った新たな投資を行っている(子どもを持つ従業員をサポートするための追加財源など)。これらの投資は、その条件に該当する社員が働くうえでは非常に重要だが、子どものいない社員は「なぜ子どもがいる人は支援を得られるのに、自分は得られないのか」という疑問を抱いている。
従業員の経歴がますます多様化する中、2022年には、経営陣は公正さと公平性にどう向き合うかという課題に取り組む必要がある。実際、HR担当幹部にとって、この問題が今年の最優先事項になることだろう。
2. バイデン政権からの強い働きかけにもかかわらず、相当数の雇用主がワクチン接種を義務化せず、検査による安全確保に頼る
2021年1月時点で、新型コロナウイルス・ワクチンの接種義務化を予定していた企業は2%未満だった。その数は1年を通じて着実に増加したが、2021年末に50%未満で頭打ちとなった。
オミクロン変異体の感染が拡大しても、2022年にワクチンの接種義務化に踏み切る企業の数が大きく増えることはないだろう。代わりに、大企業のおよそ半数がバイデン政権の求める規律を遵守するために、検査というオプションを維持するだろう。
このような状況の背景には、いくつかの要因がある。
第1に、雇用主はワクチン接種義務化で大量離職が起こる事態を懸念している。ガートナーの調査によると、HR責任者は義務化を実施した場合に従業員の7%近くが退職すると予測した。7%は大した数字ではないと感じられるかもしれないし、離職者数を過大評価している可能性もあるが、離職が起きる場合、その分布は均一ではない。地域や部署によっては、離職率が15%に達するケースもあるかもしれない。
第2に、ワクチン接種義務化が、現在行われている一連の法廷闘争によって否定される可能性を懸念する雇用主も多い。そのようなリスクを考えて、将来のある時点で評価が覆えされかねない義務化には二の足を踏んでいる。
第3に、雇用主の中には、従業員のために接種義務化の決定を下す権限は自分にはないと考え、これはいまも従業員自身の選択の問題だと主張する人もいる。
最後に、ワクチン接種の意味合いが不明瞭であること(たとえば、ブースター接種を受けていないと「ワクチン接種完了」と見なせないのか)も、プロセス全体の管理を複雑にしている。
検査プロセスの管理にはさらなる努力が求められるが、かなりの割合の企業が、これからもワクチンの完全義務化ではなく検査の継続を選ぶことだろう。