9. チーフ・パーパス・オフィサーが経営幹部の次の要職となる

 政治や文化、社会問題などに関する議論が、職場でも頻繁に展開されている。組織がよりインクルーシブかつ生産的な職場環境の構築を目指す中、従業員はありのままの自分を職場に持ち込むよう求められている。これは、個人的な見解を組織に持ち込むべきではないとされていた10年以上前とは、抜本的に異なる状況だ。

 さらに従業員は、企業がその時々の社会問題や政治論争に積極的に関与することも望んでいる。ガートナーの分析によると、従業員の4人のうち3人が、雇用主が社会的・政治的な議論に加わることを期待しているという。

 このような要因が積み重なると、職場で対立が生じる。ガートナーが500人以上の従業員を対象に行った2020年の調査では、政治的信条を理由として、同僚を積極的に避けた経験がある従業員が44%に上った。さらに、従業員が社会的・政治的な問題に対する雇用主のスタンスに失望した場合、従業員エンゲージメントが3分の1低下する可能性があることも明らかになった。

 組織の特性の変化──企業が従業員やコミュニティとどのように関わり、社会でどのような役割を果たすか──によって、2022年には経営幹部の新たな要職が登場するだろう。「チーフ・パーパス・オフィサー」である。

 現時点では、これらの責任は人事、法務、コミュニケーションなど、組織内のさまざまな役職に広く分散している。ESG(環境、社会、ガバナンス)の企業戦略上の重要性が高まる中、2022年には、新たに誕生するチーフ・パーパス・オフィサーにこれらの業務が集約されることだろう。

 10. 座り仕事は喫煙のような健康リスクを伴う

 リモートワークへのシフトは、従業員にさまざまな影響を及ぼしてきた。運動量が増えて体重が減少した人もいる(35%)が、座ってばかりで体重が増加した人のほうが多い(40%)。これは通勤や、職場での会議室間の移動に伴う運動が減ったことに起因する可能性が高い。このような運動量の格差によって、一部のリモートワーカーの健康リスクが増大している。

 これを受けて、企業は新たなコミュニケーション計画や福利厚生、テクノロジーを導入し、リモートワーカーの健康増進につながる運動を支援するようになるだろう。従来型のウェルネスプログラムの大半がそうであったように、このような健康増進プログラムへの参加は、あまり盛り上がらないことが多い。また、企業側が介入しすぎて、「雇用主は社員の健康に口を出すべきでない」と考える従業員からの反発に合うケースもある。

 さらに、こうした健康増進プログラムは、障害を持つ従業員のエンゲージメントを損なうおそれがあるため、DE&Iの面でもリスクを伴う。

 11. ハイブリッドな世界では、意図して介入しなければDE&Iの成果が悪化する

 ガートナーの分析により、リモートワークやハイブリッドワークを行う社員も、オフィスで働く社員と同様の成果を上げていることが確認されている。

 しかし、マネジャーは、オフィスに出勤する人のほうが在宅勤務の人よりも成果を上げており、昇進する可能性も高いと考えている。著名な大物経営者が「ハイブリッド社員やリモート社員はパフォーマンスが低い」と公言したことも、このような誤った認識がさらに強化される一因となっている。

 その結果、両グループの間に継続的な成果の差はないにもかかわらず、マネジャーはオフィスに出社している社員を、そうでない従業員よりも昇進させ、昇給させる可能性が高い。

 ハイブリッドな世界では、白人男性に比べて、女性や有色人種のほうが在宅勤務を好むこともデータで示されている。このような状況を考えると、意図して介入しなければ、男女間の賃金格差は拡大し、リーダー層の多様性は低下する。これまで以上に意図的に介入しなければ、過小評価グループの人材は、重要な会話やキャリアの機会、キャリアアップにつながるネットワークから排除されかねない。

 過去数世代で職場は最も混乱しており、私たちは皆、混乱の渦中に置かれている。そのペースが衰えることはないが、この混乱がどの程度の変化をもたらすかは、これから変わっていくだろう。2022年、組織の至るところに不均衡な形で表れる混乱期を乗り切るために、リーダーには手腕を振るうことが求められている。


"11 Trends that Will Shape Work in 2022 and Beyond," HBR.org, January 13, 2022.