6. リモートワークで使用するツールが、パフォーマンスの測定・改善に役立つツールになる
地理的に分散した場所で働くようになると、マネジャーは部下がどのような仕事をしているかを把握しにくくなる。その結果、仕事の成果よりも従業員がどこで働いているかに基づき、不正確で偏った業績評価が行われるおそれがある。
2020年秋、ガートナーが3000人近いマネジャーを対象に行った調査では、マネジャーと経営幹部の64%が、オフィスに出社している従業員のほうがリモートワークの従業員よりも高い成果を上げていると考え、76%が出社している従業員のほうが昇進する可能性が高いと考えていることが明らかになった。
今後は、従業員の貢献度を測る際に、現在彼らがバーチャル環境で使用しているのと同じツールが使われるようになるだろう。たとえばバーチャルミーティングでは、新たなテクノロジーによって、同じミーティングに参加する他のメンバーに関するバックグラウンド情報が提供されるようになる。参加者についてより詳しい情報を把握できれば、その場にいるメンバーにとって最も重要なテーマに焦点を当てることができる。
また、コラボレーションテクノロジーには、従業員同士の交流全般が改善に向かうように、従業員の行動パターンを変えさせる力もある。たとえば、会議の場で他の参加者ほど積極的でなかった人に声をかけるよう、マネジャーを誘導することが可能だ。このようなナッジにより、参加者がインタラクションの方法を調整し、会議の質の改善につなげることができる
7.ハイブリッドワークの管理が煩雑なため、オフィス復帰を求める企業が出てくる
2022年にナレッジワーカーのハイブリッドワークを認める予定の雇用主は90%以上だ。年が明けてしばらくはこの流れが続くだろうが、今後、多くの著名企業が軌道修正し、従業員にフルタイムでオフィスに戻るよう要求することが予想される。この変化を推進する要因として、以下のものが挙げられる。
・業績不振の原因として、CEOがハイブリッドワークをやり玉に挙げる。
・ハイブリッドワークの従業員の離職率の増大。
・ハイブリッドワークの従業員が複数の仕事を同時にこなしているという報告。
・組織文化が損なわれているという認識。
もっとも、強硬な職場復帰策を実施した組織はすぐに、自分たちが直面していた課題は、実は他の根本原因によるものだと気づくだろう。従業員にオフィス復帰を求めても、離職率をさらに悪化させるだけだ。
8. 企業が従業員を理解するための最新の指標としてウェルネスが使われる
経営幹部は長年にわたり、従業員を理解するための指標として、従業員満足度や従業員エンゲージメントなど多様な指標を試してきた。2022年には精神的、身体的、経済的な健康状態を評価する新たな指標が加わるだろう。
新型コロナウイルスのパンデミックを受けて、多くの企業が従業員向けのウェルネス支援を拡大してきた。ガートナーが52人の人事担当役員を対象に行った2020年の調査では、以下のような結果が出た。
・94%の企業がウェルビーイングプログラムへの大規模な投資を実施した。
・85%がメンタルヘルスへのサポートを強化した。
・50%が身体的ウェルビーイングへのサポートを強化した。
・38%が経済的ウェルビーイングへのサポートを強化した。
このようなプログラムは、制度を利用している人には大きな恩恵をもたらす。ガートナーの分析によって、これらの福利厚生を利用している従業員は、メンタルヘルスのレベルが23%高く、身体的健康のレベルが17%高く、「夜間によく眠れる」と答えた割合も23%高いことが明らかになった。こうした個人レベルの状況改善が、より高いパフォーマンスと社員の定着率につながる。
ただし、このようなプログラムを利用する従業員は一部に限られている。筆者らのデータによれば、過去12カ月間に雇用主が提供する何らかのウェルビーイングプログラムを利用した従業員は40%以下に留まっていた。
2022年には、従業員のパフォーマンスと定着率をより正確に予測するために、企業は従業員の経済的、精神的、身体的な健康状態を把握するための新たな指標を導入するだろう。