フリーミアムの欠陥を正す
多くのネットワークビジネスと同様に、そのデートサイトもフリーミアムモデルを採用していた。つまり、無料の基本サービスは有料のプレミアムサービスによって支えられている。
ただし、ネットワークの拡大を進めるために、既存会員が友人にサイトを紹介すれば、プレミアムサービスを無料で使えるようになるプログラムを導入している。最終的には、それらのプレミアムサービスをサイトのプロフィットセンターにするのが狙いだ。
この仕組みは、多くのデートアプリにジレンマをもたらしている。
プレミアムサービスを有料で使う予定のない既存会員が、そのサービスを無料で使うために友人を紹介することで新規会員が増加し、プラットフォームを低コストで利用する会員の数を効果的に増やすことができる。また、自分で料金を支払って有料のプレミアムサービスを使おうと思っているが、無料になる仕組みがあるなら利用しようと考える会員からも紹介が集まる。ただし後者の場合、有料会員の数は当面減少する。
さらに「紹介者数の閾値」、すなわちプレミアムサービスを無料で利用するために紹介しなければならない友人の数が、会員の行動に重要なインパクトを与える可能性がある。たとえば、紹介を受けて登録した新規会員がプレミアムサービスを利用する可能性が低い場合、長期的には、彼らの存在によってプラットフォームのコミュニティ価値が損なわれるおそれがある。
筆者らは、ユーザー基盤の収益性を下げることなく、成長拡大とのバランスを図ることができる紹介プログラムを設計できるかどうかを明らかにしたいと考えた。
そこで、あるプラットフォームの経営幹部と緊密に協働し、2年間かけて、実際のプラットフォームで大規模なランダム化比較試験を行った。プレミアムサービスを利用するために必要な紹介者数を引き上げることが、紹介を受けた新規会員のエンゲージメントレベルに変化をもたらすかを評価することが目的だ。